「信じることを忘れた人たちへ」ゴールデンスランバー(2010) 座布団さんの映画レビュー(感想・評価)
信じることを忘れた人たちへ
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「人間の最大の武器は信頼ですから」
主人公のこの言葉に全てが集約されている。
信じる者と信じない者。
この二極で物語は形成されている。
正確に言うと、信じる者を描くことでそれ以外を描いている。
そして「信頼」とは、当然ながら「その人間をどれだけ知っているか」という一点にのみ裏付けされている。
主人公を信じるのは、主人公をよく知っている人間のみということだ。
また彼が犯人でないことを知っているのは、この映画を見ている我々のみである。
うざったいくらいに差し込まれる回想シーンを通して、我々は彼を信じることもできる。
日頃第三者として様々な事件報道を耳にしている我々は、当然ながら加害者を信頼していない。
そして、ふと考える。
ある日自分の友人が加害者としてニュースで報じられたら、自分は友人の無実を信じることができるか?
恐らくできないだろう。
驚き、犯行に至った事情を推測するにとどまり、信じることを放棄するのではないか。
そういう意味では、甘ったるい映画とも言える。
しかし、逆に考えると、自分がいかに無防備に情報を信じ、人を信じることを放棄しているか、と問われる話でもある。
ただし、それは映画自体の面白さには直結していない。
そのため観賞後の満足感が少ないのも事実である。
もし、主人公を犯人として描き、我々一観客をも信じこませ、結果犯人ではないと裏切らせることができたならば…
映画という報道を観た僕は深く打ちのめされただろう。
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