劇場公開日 2010年1月30日

「伊坂作品に出会った小学時代を思い出した新たなオールタイムベスト級の1本」ゴールデンスランバー(2010) たいよーさんさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0伊坂作品に出会った小学時代を思い出した新たなオールタイムベスト級の1本

2021年3月24日
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鑑賞方法:DVD/BD

泣ける

興奮

知的

コロナ禍で火がついた映画鑑賞。かれこれ今年も40本以上観ているのだが、久々にビリビリきた。小学校の頃に読んで以来この作品に触れたのだが、まさかオールタイムベストのひとつになるとは。圧巻、お見事。

人生で初めて自分のお金で買った小説が『ゴールデンスランバー』だった。小学生高学年でも分かるテンポの良さと、伏線回収の気持ちよさ。さすがに小説の醍醐味とメッセージは分かっていなかっただろうが、伊坂作品を良く読んでいたあの頃を思い出した。
実のところ、読んだと言っても8年以上経っているので覚えていないところばかりで、かなり新鮮な気持ちで楽しめた。序盤から訪れる危機とサスペンスの様相。何一つ疑念を持たない青柳の顔色が次第に悪くなり、危険な事が身に降りかかっていることに気づく。それを追体験するようなスリル。樋口と視点が変わることによって浮かび上がる事実と過去。そして、伊坂幸太郎作品を象徴する怒濤の伏線回収と人間ドラマ。139分を飽きさせない圧倒的なスケールとテンポがたまらなく良かった。最後には涙で画面が滲んでしまうほど…。
堺雅人も竹内結子もそうなのだが、現実と地続きしているような世界観の体現が上手い。天変地異のような大事件に巻き込まれているのに、リアリティを感じてしまう演技はさすが。竹内結子はもういないと思うと胸が苦しくなる。香川照之も非道な正義を振りかざす警察官のヒールぶりも良い。
最後に触れたいのは、音楽。やっぱり斉藤和義だったのか。同じ伊坂幸太郎原作の『アイネクライネナハトムジーク』でも良い化学反応を魅せていたが、ここでも凄かった。スリルを音楽で扇動したかと思えば、ドラマにはハンカチを差し出すような暖かさを引き出す。そうしたバランスとサスペンスの重厚感が生んだからこそ、素晴らしい1本になったのだろう。

僕個人の青春が詰まっている記憶も溢れてきた本作。ただ、単に情が入ったスコアではないことをここで記しておく。間違いなく、サスペンスの良さを生かした究極の1本であることに間違いないからだ。

たいよーさん。