「理解させるためには。」さまよう刃(2009) ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
理解させるためには。
原作は読んでないが、何ともやるせない内容である。
鑑賞後、気持ちの持っていき場が見あたらない…。
妻を亡くし、最愛の一人娘をも失ってしまう主人公。
しかも相手は少年法に守られたケダモノ(という描き方)
犯人のアパートで娘の犯行ビデオを観てしまった父は、
あまりの残虐さにその場で吐いて腰を抜かしてしまう。
(このリアルな映像、こちらも生きた心地がしなかった)
彼らは更生する気などない。ならば自身で復讐するしか
方法はない、と半ば強制的に復讐劇が開始されていく。
私も一応、親なので…彼の置かれた状況に同調できる。
あんなモノを観れば、それこそ逆上するのは当然だ。
犯人を殺してやりたい!自分の子供と同じ思いを…と
法が罰さないのなら、自分の手で!と思うかもしれない。
そこまでの問題提起はいいと思った。
昨今では、こういった極悪少年犯罪が多すぎる。
私の子供の頃は殺人事件というのに必ず理由があった。
理由なき殺人って、なに!?誰でもよかった、だと??
他人を殺さなければならない理由が全く分からない。
しかし、こういう人種なのだから、極刑に処せばいい。
という考え方では、なんの解決にもなっていない。
今作でも少し描かれるが、命の重さを測れない人間に
「死にたくない」「死んだら悲しい」「どうか死なないで」
という恐怖や不安を理解させることこそが重要なのだ。
本来なら子供の頃~何らかの形で教わってきただろう
そのことについて、最近ではゲーム感覚で捉えている
冷めた若者たちが増えてしまった。どうしてなんだろう。
最愛のものを失ってからでないと、気付かないことか?
考えても考えても、胸にはやるせなさが残る。
今作の内容が云々より、有効な回答が提示されずに、
さまよえる作品になっていることが、いちばんの恐怖だ。
(生まれたその時から極悪人。なんて存在しないはず。)