「悩むフクロウ」ガフールの伝説 小二郎さんの映画レビュー(感想・評価)
悩むフクロウ
「ウォッチメン」の監督によるアニメ作品。
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子フクロウが初めて空を飛ぶシーンがイイ。
主人公ソーレンは伝説のガフール目指して飛び立つ。それはまさに希望の象徴であった。
対して彼の兄クラッドの飛翔の動機は、他のフクロウを蹴落とすことであり憎悪であった。
その希望と憎悪の対比を、「フクロウが飛ぶ」という映像でキッチリ見せた監督は偉い。
その対比を言葉で説明しようとしたら途轍もなく面倒なことになるのに、監督の映像力はサラッと何気なく伝えきる。
映像力(表現力)があっても、伝えたい中身が無い映画というが往々にしてある訳だが、
(逆に中身に映像力が追いつかず表現しきれていない映画もあるが)
「ガフールの伝説」は映像力とその中身が拮抗した映画だったと思う。
高く飛翔するのが英雄の条件ではなく、落下していく時にこそ英雄の真価が発揮されるという事を映像力で表現していたのも印象的だった。
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もうひとつ印象的なシーンは、
伝説の英雄キールのライズとの対面シーンであろうか。
ソーレンにとって憧れの英雄ライズの実態は、爪がもげ片目も傷ついた老フクロウだった。
それが実際闘った者の姿であり「輝かしくも美しもない」。
英雄潭と違って実際の闘いは「まるで地獄だ」と、ライズは叫ぶ。
それでも「自分の信じる正義を貫くだけだ」と、ライズは言いきる。
(「ウォッチメン」のロールシャッハを若干彷彿とさせる。)
ソーレンが敵の首領を倒した後の表情も印象深い。
歓喜とはほど遠い苦渋の表情である。
英雄潭の内実は地獄だと、フクロウの一瞬の表情が突きつけてくるのである。
この映画の最後は平和が訪れ子どもたちに英雄潭を聴かせる場面で終るわけだが、
その前段の苦々しさは何処へいったのだろう。
英雄潭の内実が地獄だとしても、夢やヒーローは子どもに必要って事なのか。
フクロウを主役にした子ども向けのアニメではあるが
「ウォッチメン」的な矛盾と苦々しさを内包した映画でもあった。