「場面展開に乏しい退屈な作品でした。芝居でも嘘八百を聞かさせられるのは苦痛ですね。」インフォーマント! 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
場面展開に乏しい退屈な作品でした。芝居でも嘘八百を聞かさせられるのは苦痛ですね。
インフォーマント!とは告げ口屋。企業の闇カルテルを内部告発する人物は、通常この手の企業ドラマであれば、ヒーローとなり得るし、告発に至るまでがサスペンスとして描かれることでしょう。マット・デイモン主演とあって、そんな期待感で試写会に臨みました。
ところが、本作は、ウィテカーが次々に放つ嘘八百を垂れ流すハチャメチャ・コメディだったのです。社会派実録映画のような展開を期待していた小地蔵の予想は完全に外れました。しかも主役のマット・デイモンは役作りのためわざわざ15キロも太って、単なるオッサンに変身!ラストで登場する10年たった禿頭の主人公の姿は、絶対にマット・デイモンとは思えないことでしょう。
しかもデイモンが演じるマーク・ウィテカーは支離滅裂な男。嘘の上に嘘を固めて、FBIを翻弄してしまう人物だったのです。
ウィテカーは生化学の博士であり、ADMという大企業の重役であったため彼の語り口は、一見まともに聞こえるから始末に悪い(^^ゞそんなウィテカーに振り回されるFBIも仕方がないことでしょう。
けれども観客にはウィテカーが語っていることが変だということがすぐ分かってしまいます。セリフ中心で、ウィテカーはとにかくしゃべりまくります。ある程度観客まで騙してくれるのならいざしも、最初からバレバレでウィテカーの虚言癖を見せつけられては、C調男のどこまで本当か分からないご託に付き合わされてヘキヘキとしました。
とにかく場面展開が少なく、ずっとどこかのオフィスでウィテカーがしゃべったり、取り調べを受けたりするシーンが多いのです。途中で飽きが来て、うたた寝をする人が結構いたのも無理からぬことでしょう。
思い起こせば昨年のソダーバーグ監督作品である『チェ 28歳の革命』でも、ストーリー上の説明が皆無なので、ものすごく筋について行けない作品でした。この監督は、観客目線というのをどこか無視して、自分の世界に没入してしまっているのではないでしょうか。
もっと違う描き方をすれば面白くなったはずです。
ところで、本作は実話を元に作られていて、味の素なんか実名で登場するので、企業としてはいい迷惑でしょうね。しかし、実際でも90年代に味の素と協和発酵などが談合でFBIに摘発された事件を基にしています。
ウィテカーの数多くの嘘のなかで、本当だったのが闇カルテルの存在。談合の現場の証拠となったのは、本作では録音テープになっていましたが、実際はビデオによる隠し撮りだったようです。
そんなわけでウィテカーは、自らも横領事件を犯してはいたものの、それも捜査協力によるストレスが原因とする彼の言い分にも同情の余地はあるとは思えます。
ウィテカーを最初からダーティなヒーローと決めつけず、彼の一見でたらめな言い分に即して、ストーリーをシリアスに展開させたほうがかえって面白かったのではないかと思えました。