「「ハイヨー、シルバー!」」ローン・レンジャー マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)
「ハイヨー、シルバー!」
1950年代、テレビの黎明期、日本で制作されるテレビドラマは少なく、アメリカから多くのテレビ映画が持ち込まれ日本語吹替で放送された。そのなかの一本が「ローン・レンジャー」。 たしか日曜の昼だったと思うが 、黒い仮面を着けたローン・レンジャーが白馬にまたがり、軽快な「ウィリアム・テル序曲」に乗って「ハイヨー、シルバー!」と疾駆するオープニングを目を丸くして見たものだ。
このとき、インディアンの相棒トントは、あくまでもヒーロであるローン・レンジャーの助手にすぎない。
今回の作品ではジョニー・ディップが演じるトントが主役。これは配役が発表になった時点で予想できた。
トントによって生まれるローン・レンジャーの姿を描く物語で、ここでのトントは賢者であり、後にローン・レンジャーとなる若き検事ジョン・リードは正義感は強いが腕っ節は弱いという設定が、TV版と大きく異なる。そして、これがこの作品の面白さでもある。
予想通りの破天荒なアクションが続くが、大きな違和感もなく、ジョニー・ディップらしいコミカルさも加わって、冒険活劇としてかなり面白い。
頼りないヒーローをアーミー・ハマー、ヒロインをルース・ウィルソンという美男美女で固め、悪役ブッチのウィリアム・フィクトナーが素顔が分からないほどのメイクで凄みを出し、皆ノリノリで演じているのがわかる。
そしてハンス・ジマーの音楽がいい。メイン・テーマは正統派の西部劇というよりはマカロニ・ウエスタン寄りで、エンニオ・モリコーネの「ウエスタン」(1969)のアレンジを取り込んだサウンドが軽快だ。町の女レッド(ヘレナ・ボナム=カーター)が昔の職業を語れば「白鳥の湖」の旋律で遊び、エンディング・テーマではドヴォルザークの「新世界より」から「家路」を絡ませ哀愁を漂わせる。
そして、「ローン・レンジャー」といえばやはりこの曲。テレビと違って迫力ある「ウィリアムテル序曲」が高らかに鳴り響くなか、愛馬シルバーにまたがり疾駆するローン・レンジャーには胸躍る。
ILMによるVFXは相変わらずカメラ・ワークが巧く、重量感がある。
ただ、1933年のシーンは不要だ。どうしても入れたければ、冒頭とラストだけでいい。せっかくスピードが乗ってきたところへ、要らぬカットを割り込ませて流れを止めてしまうというのは、いったいどういう魂胆か。そんなことより、少年ウィルが疑問を訴えたように、トントがどうやって牢屋から出たのかを見せてほしい。危惧はしていたが、つくづく、ゴア・ヴァービンスキーという監督は無駄に時間を延ばすのが得意らしい。