「設定にこだわりぬいたディズニーの傑作」塔の上のラプンツェル pullusさんの映画レビュー(感想・評価)
設定にこだわりぬいたディズニーの傑作
3月14日に公開される『アナと雪の女王』を目前に、ディズニー長編アニメーションを振り返る。
『塔の上のラプンツェル』は『アナと雪の女王』と同じスタッフで、ラプンツェルの方には日本人スタッフがいたという話を聴いたが、今回の雪の女王でも活躍しているのか、楽しみである。
子供用のアニメは既に物語やオチが安定してしまっている風潮がいなめないが、実はこの作品は設定や構成が非常によくできていて驚かされた。
まず、王子が王子でないとういう斬新な設定に驚く。もとの話となったグリム童話の「ラプンツェル」だが、これはラプンツェルを見つけるのは"王子"とされている。しかし本作品では"大泥棒"であるフリン・ライダーがラプンツェルを見つけるという設定で物語が進んでいく。その設定ゆえに、その後の人物関係が面白くなっていくのだ。
まず、大泥棒というだけあって、国中が探している指名手配犯になっている。追われている身という設定は、常に緊張感があり、何が起きてもおかしくない。さらに、悪人の設定も面白い。最初こそ、既に大泥棒であるフリン・ライダーが悪役だと思わせるのだが、実は彼の裏切り行為によって、泥棒仲間が一気に対敵へと変わる。
キャラクターの設定と物語が見事にマッチした構成となっている。
そしてなんと言ってもディズニーならではの豊かな表情も見所だ。初めての自由に浮かれるラプンツェルと、同時に母親を裏切ってしまった罪悪感に苛まれる彼女の表情がころころと変わるシーンがあるのだが、これは本当に見ていて楽しい。表情が大きく変わると、自然と観客もキャラクターに感情移入してしまうのだ。
音楽、映像、物語、ともに素晴らしく、さすがであると賞賛したい。まさに、子供だけなく大人も楽しめる作品となっている。
『アナと雪の女王』では、『塔の上のラプンツェル』のスタッフだけでなく、あの名作『美女と野獣』のスタッフもタッグを組んでいる。見ごたえある作品に仕上がっていること間違いない。