「トーテムは持ったか?」インセプション もんさんの映画レビュー(感想・評価)
トーテムは持ったか?
さすがはクリストファー・ノーランである。
まったく新しいSF映画になっている。『ダークナイト・ライジング』と同じで究極の映画に仕上がっている。
何から何まで素晴らしい。
オススメは、バスを列車に仕上げて街中を走らせているシーンと、横に回転する巨大なセットを使ったアクションシーンだ。とにかく驚くであろう。
内容はとても難しいので、最初は吹き替えで観た方がいいと思う。
本作は観れば観るほど違った楽しみ方ができる映画になっている。
さて、ここからは映画のラストについてだ。
最後の最後、インセプションを成功させた(?)コブはとうとう家に帰り、子供たちと再会をはたす。その時コブはトーテムを回すが、現実か夢かわからないまま物語が終了する。
結局この物語は現実か?それとも夢だったのか?見終わった時はそればかり考えてしまうが、着眼点はそこじゃない。
最後のシーン、トーテムを回して現実か夢かわからないまま終了。そして、ここでタイトルである“INCEPTION”の文字が出てくるのだ。
最後に「INCEPTION」とタイトルが出されるのは
たった今、観客に
「コブがいるのは現実じゃなくて夢じゃないのか?」
ってアイデアをノーラン監督が“INCEPTION(植え付けた)”した事になるのだ。
だが、現実なのか夢なのか、やはり気になってしまう。
すると、あの聞きなれた音楽が流れてくる。
そう、夢からもどるとき、「キック」で使う音楽だ。
あの音楽のタイトルは「水に流して」だ。
これの意味がとても興味深い。意味は「私は決して後悔しない」である。
席に残っている観客全員にこの音楽は聞こえている。我々はみんな、この映画館という装置に繋がれて、同じようなかっこで座って、この同じ映画の世界を共有していた。でも、もうすぐ僕らはキックによって映画という虚構の世界からそれぞれの現実に戻る。
音楽が終わると、もう一度「INCEPTION」とタイトルが出て劇場に明かりがつく。
我々は現実に戻ってきたのだ。
でも何人かの人は思うはずだ「これって本当に現実?」
これが最後に出てくるタイトルの意味だ。
たった今、観客に
「ここはほんとうは夢なんじゃないのか?」
ってアイデアをノーラン監督が“INCEPTION”したのだ……。
果たして、ここは夢なのか現実なのか………
…………さて、みんなトーテムは持ったか?