「ギルロイ監督は今回はやり過ぎ。ある程度ストーリーを掴んでおかないと、置いてきぼりになるというやっかいな作品です。」デュプリシティ スパイは、スパイに嘘をつく 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
ギルロイ監督は今回はやり過ぎ。ある程度ストーリーを掴んでおかないと、置いてきぼりになるというやっかいな作品です。
『デュプリシティ』には、二枚舌という意味もあるそうです。詐欺師が詐欺師を騙すストーリーの映画は、これまで多々あったと思います。これはそのスパイ版と言うべきもの。諜報部員が諜報部員を騙すとなると詐欺師以上に手が込んでいて、誰が誰を信じていいかさっぱり分からなくなってしまう。そんな展開予想の難解な作品が本作。
『フィクサー』でもあっと驚くどんでん返しを仕掛けたギルロイ監督は、本作でもやりました。最後に敗者となるスパイがいかにも気が抜け、憔悴しきった表情を浮かべる顛末を知ったとき、へぇ~実はこんな裏があったのねと驚かずを得ないことでしょう。
まさに衝撃のラストです!
果たしてこの物語の勝者は、誰か?そこはスパイが絡むと結構複雑なんですね。二重スパイを働く奴もいたり、一見二重スパイと見せかけて信用させ、実は二重スパイではない奴もいたり、スパイを騙して相手方を攪乱させようとする奴もいたりで、複雑なんですよ。
その背景にあるのは、トイレタリー用品の新興企業エクイクロム社のカリスマCEO、ディックと業界トップの老舗企業B&R社のCEOハワードの骨肉の争い。
上昇志向の強いディックは、産業スパイを使ってでも自社の業績をアップさせようとする野心家。対するハワードは、徹底した危機管理の達人で、ディックの陰謀を迎え撃つのです。この二人の対抗意識は相当なもので、顔を合わせようものなら乱闘騒ぎまで起こすほどのものでした。
ディックとハワードの社運をかけた諜報合戦。それを実行しているそれぞれのスパイチーム。そして、2社のスパイチームに雇われたレイとクレア。彼らが全く手の内を見せずに、それぞれの思惑で動くので、全く結末が見えませんでした。
それにしてもギルロイ監督は今回はやり過ぎ。主人公のレイとクレアの関係も連んでいるようで互いに填めようと仕掛けているところも見せて、二人がラブラブの関係になっても、本当は色仕掛けで利用しようとしているのに過ぎないのかも?と徹底的に、二人の関係を敵味方どっちでも捉えられるように描いて、観客を悩まさせます。
特にかつてレイがMI6の諜報員を解雇されたのも、クレアの色仕掛けにまんまと引っかかって、重要情報を盗まれるという過去を冒頭に見せつけていたので、レイは絶対クレアにまた騙されると思っていました。
ところが二人はタッグを組んで、お互いのクライアント企業を手玉にとった完全犯罪を目論むのです。しかし、それすらクレアの気持ちがよく分からず完全犯罪事態がトリックかもとしれなかったのです。
こんなストーリーですから、途中は訳が分からなくなり、ウトウトしてしまいました。 ネタばれしたのでは興ざめになる話ですが、ある程度ストーリーを掴んでおかないと、置いてきぼりになるというやっかいな作品です。
もう1回見れば、なんとか筋を理解して楽しめることでしょう。