「隙のない緻密なストーリーに納得。ラストの離婚調停シーンでは、ほろりとなって家族の大切さを感じさせてくれる作品です。」セブンティーン・アゲイン 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
隙のない緻密なストーリーに納得。ラストの離婚調停シーンでは、ほろりとなって家族の大切さを感じさせてくれる作品です。
アラサーも後半にさしかかると、「若いころに戻ってやりなおしたい」と本気で思春期を懐かしみ、出っ腹やたるんだ二の腕を呪ったりするものでしょう。そういう人の願望にストレートに答えたのが本作です。
突然37歳の親父が17歳に戻ってしまうなんて、子供騙しな話に見えてくるでしょう。しかしディズニー映画でありがちなファンタジックさで誤魔化してしまうのでなく、緻密なストーリーテーリングで、あり得ない話にリアルティを持たせて楽しませてくれました。
やはり17歳当時の主人公役を演じるザック・エフロンはただ者ではありません。日本ではまだ知名度はありませんが、アメリカのテレビドラマでは引っ張りだこになっているのも頷けます。
ザックは、ルックスの良さだけでなく、演技力も確かなもの。同じハイスクールの同級生として接している自分の子供達には、あくまで37歳のパパらしく包み込む優しさを演じて見せていて、単なる高校生とはチト違って見えてしまうところがうまいなぁと思いました。ザックの演技によって、17歳だけど中身はオヤジという設定が全然嘘っぽく見えないのです。
まぁでも同年代にとっては身につつまされる話ですよ。マイクはプロテストとなる大事な試合を放棄してまで、恋人のスカーレットが自分の子供を堕胎するといった言葉を撤回させる選択をします。そして彼女に詰め寄り抱擁したときは、そりゃあハッピーエンドだったでしょう。でもその結果、プロへの道は閉ざされて、平凡なサラリーマン人生を送ることになったら、誰だって愚痴をつきたくなるものですよ。
そしてそんな愚痴を20年間も聞かされ続けたら、スカーレットも離婚を考えて当然です。まして、昇進まで後輩にとられてしまって、マイクは御先真っ暗。こんなはずじゃなかったと思ったことでしょう。しかし、その危機感は、彼自身だけでなく、ガイドスピリットも同様に感じていたようでした。小地蔵も同じ立場だから、わが分身のぼんくらな生き方には、相当に業を煮やしています。しかし普通は守護霊は、地上の人間の生き方に介入できないはずです。でもマイクのガイドスピリットは、彼を強制的に20歳若くしてしまうのでした。
高校生に戻るのはいいとして、生活はどうするの?と心配する向きもあるでしょう。そこは、マイクが高校時代にチーム内でいじめからいつも救っていた親友のネッドが父親役を演じることで、問題解決。しかも彼は得意のIT技術で大金持ちになっていて、経済的に全然困らないようになっているのです。この辺の設定には、隙がありませんね。
さらにネッドは、大のキャラクターマニア。スターウォーズの撮影で使われた小道具を、ネットオークションを通じて高額で落とせるなんて、うらやましいオタクぶりを見せつけます。
けれども、そんなオタクぶりが思わぬ恋のチャンスをもたらすことになるなんて、意外でした。マイクが通う高校の女校長に一目惚れしたネッドは、あれやこれやと手を尽くして、やっとの思いで校長を夕食に誘います。でも会話は当然かみ合いません。
ところがどっこい、話が『ロード・オブ・リング』になって、エルフ語の台詞をネッドが語ると校長もエルフ語で返してくるではありませんか。驚くネッドと意外なオタクぶりを見る校長との珍妙な会話が面白かったです。それと『LOR』の話題は懐かしいですね。
17歳に戻ったマイクが目指すものとは、当然人生をやり直して、バスケット選手を目指すサクセスストーリーかと思いました。でもテーマは、家族だったのです。ガイドスピリットはマイクにもう一度家族の大切さを再認識させるために、若返りさせて子供達の同じ高校へ送り込んだのでした。
そこで初めて知った見た自分の息子アレックスのいじめ。そして娘マギーの不純な交友関係にマイクは驚きます。20年前にネッドを守ったのとそっくりに、アレックスを守るところや、マギー口説かれて逃げ惑うところが面白かったです。そして自分がどれだけ愚痴にかまけて家族をほったらかしにしてきたのか、反省するのでした。
意外にも泣かせてくれるのが、離婚審問の裁判の時。当然37歳マイクは出れません。仕方がないので、17歳のマイクが代理で登場して、マイクから預かったという手紙を読み上げるシーンは感動的でした。
それは心からのお詫びとスカーレットへの愛をストレートに語るものでした。とても17歳が語っているとは思えません。ハートを直撃されたスカーレットは不審に思って、マイクの残した手紙を見ます。なんとそれは白紙だったのです。はっと気づくスカーレットの表情がとても印象的でした。
そしてラストにまたまた20年前と全く同じプロテストの絡んだバスケの大会シーンが再現します。20年前と同じ行動をとろうとするスカーレットに、若返ってチャンスをつかもうとしていたマイクがとった意外な行動とは・・・?
17歳のマイクに口説かれるスカーレットのくだりは、アラサー女性にとってきっとうっとりするのではないかと思います。