キッチン 3人のレシピのレビュー・感想・評価
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ある意味さわやかな映画
独特の映像美とテンポで3人の恋愛を描いている。 題材としては昔からよくあるテーマであるが、ある意味さわやかに描かれている。 ヒロインの独特な魅力と二人の俳優の魅力が大きいのかもしれない。 中盤は少しだれるか、全体的にさわやかな感じがよかった。
かわいらしくて綺麗だけど
画がきれい。シン・ミナもチュ・ジフンも美しい。 でも結局なんなんだろう、やっぱり、完璧で幸福な時間は長くは続かないものなのかな。
光の、裏で
ホン・ジヨン監督が、「アンティーク/西洋骨董洋菓子店」で人気を獲得したチェ・ジフンを主演に迎えて描く、眩いまでの美しさに彩られたラブストーリー。 一見、韓国映画界が得意とする純愛をテーマにした爽やかなラブストーリーを連想させる作りだ。しかし、この作品、鑑賞するうちにその安易な想像は大胆にひっくり返される。 観客まで目を細めてしまう鮮やかな光にくるまれていたのは、鬱憤、孤独、怒りによって沸騰させられた憎悪、疑惑の姿である。 金融会社を唐突に辞め、料理店を開くことを決めた男が、料理の師範代としてパリから呼び寄せた一人の天才シェフ。そのシェフは、男の妻が偶然、体を重ねてしまった男性だった。 夫婦の家に転がり込んだシェフの居候から始まる物語は、韓国独特の会話の応酬を極端に抑え込み、その爽やかな展開に思わず笑顔がこぼれてしまいそう。だが、作り手はその笑顔を前もって予測した上で、会話の端々に欲求不満、煮えたぎる違和感を流し込む。 変だ、怪しい、気持ち悪い・・・。陰の感情を徹底的に積み重ね、それでもファンタジーの要素を表に押し出して観客を軽やかにだましこむ作り手の嫌らしさ。その全てが、ラストの爆発を見事に活かしきることに成功している。 だが、観客は気付く。決して、この作品を鑑賞した後に心に残るのは痛みではなく、ささやかな幸福であることを。爆発をもって残ったのは、男と女の本当の気持ち、本当に幸せな答え。 単なるコメディーでは描けない、痛み。真実。韓国ラブストーリーがもつ重層的な心理の描き方には、理想的な男女の物語の形がある。光の裏にあるトリックを、たっぷりと味わって欲しい。甘いだけでは、ない。
許すべきか、許されざるべきか、それが問題
この作品で観客に提示している愛情の形は、とても奇妙ではあるが、面白い。
主人公のモレは、幼なじみの間柄からとサンイン結婚した。そこに、モレがはずみで関係をもった男ドゥレが夫婦の家庭に割り込んでくる、という、トリュフォーの名作「突然炎のごとく」や「恋のエチュード」を思わせるようにストーリは展開はしていく、この作品のキモは、空気のように当たり前の間柄から結婚した夫婦の愛情に、一瞬に燃え上がった愛の炎が勝ることができるかどうか、という点にある。
長年にわたる温もりから生まれた愛はとても大切だが、恋愛を楽しむ意味では、一瞬にして燃え上がった愛も魅力的だ。その二つの異なった愛の形のどちらに真実の愛があるのか、という恋愛の謎をテーマに、韓国では珍しい(と思う)女性監督ホン・ジヨンは、その二つの形が違う愛の狭間で揺れ動く女心を、おいしそうな料理の映像を挿入しながら、テンポよく、楽しげに演出している。おそらく、この監督は二つの愛を手にして迷う主人公の妻よりも、物語の展開を楽しんでいたのだろう。観ている間、全編にわたって爽やかな空気が流れていたように感じられるくらいに観ている側も楽しめたのは、この女性監督の気分そのままを体感することができたからではないかと思う。「自分が楽しまなければ、他人を楽しめられない」というエンタテイメントの論理のひとつが、この作品にはある。
ただ、この作品の問題点は、物語の導入部だ。妻がはずみで他人と関係をもつのはいいとしても、妻がそれを夫との結婚記念日の会食で話してしまい、しかもなお、夫はわだかまりをもちながらも許してしまう。この最初の奇妙な展開を、観客のどれほどが許せるのか、実は、そこにこの作品の成否がかかっている。
いくら天真爛漫な性格、とはいっても妻が夫にそんなこと話すのはおかしい、その妻の不貞を許す夫の気持ちはもっと理解に苦しむ、と思ってしまうと、この作品の物語をそのものを否定しかねなくなってしまう。「そういう夫婦もいるだろう」と思えれば、物語を楽しむことはできるが、「男女が逆だったら、女性は100%男を許さない」と思うと、作品そのものに同情も共感もできなくなってしまう。せめて妻が話さなければ、と、この導入部だけは監督の演出を恨んでしまう。
だから、これからこの作品を観る方は、観ているときだけは、とりあえず、少々の罪も許す寛大な心をもっいただきたいと思う。そうすると、物語も楽しめて、天真爛漫で少女のような心をもった主人公の妻が自ら二つの愛に回答を出すまで成長する姿も温かく見守ることができるはずだ。また、奇妙な部分もひとつの愛の形と思えれば、それはそれで作品そのものの魅力のひとつになりえるかもしれない、と無理矢理だが推薦の弁として付け加えさせてもらう。
という理由で、この作品の私の評価点数は、どっちつかずの50点ということです。
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