「“草食系”男子部下への“プロポーズ”という、アリエナイ上司命令に現実味を持たせたシナリオは多いに注目すべき点ではないでしょうか。」あなたは私の婿になる 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
“草食系”男子部下への“プロポーズ”という、アリエナイ上司命令に現実味を持たせたシナリオは多いに注目すべき点ではないでしょうか。
ネットの批評では、ありきたりの王道ラブコメとの評価がもっぱらな作品。確かに同じ監督の前作である『幸せになるための27のドレス』と展開は似ているとも思えます。
但し、本作の仕掛けである、“草食系”男子部下への“プロポーズ”という、アリエナイ上司命令に現実味を持たせたシナリオは多いに注目すべき点ではないでしょうか。
タフでバリバリ仕事をこなし、全く結婚に興味を持たなかったアラフォーのキャリアウーマンのマーガレット。その彼女が、ピザの申請ミスより国外退去とキャリア喪失の危機に瀕したとき、起死回生の策として、同席していた部下のアンドリューを勝手に婚約したことにしてしまうのです。
こんな手があるなんて・・・(^^ゞ
史上空前の“婚活時代”に贈る、新しいマリッジ・チャンスの見つけ方かもしれませんね。
当初はぎくしゃくしていたふたりだったものの、アンドリューの実家があるアラスカに舞台が移ってからのふたりの自然な変化にアン・フレッチャー監督の演出の冴えと、主演のサンドラの演技力を感じさせてくれました。
タフな女が女性らしい優しさに目覚めていく様をコミカルに演じるは、サンドラの十八番といえるでしょう。
十八番ぶりを遺憾なく発揮する抱腹絶倒の掛け合いが随所に散りばめられて、大笑いすること必至です。
この結婚は、アンドリューにとっては、青天の霹靂のような宣言でした。何しろマーガレットは、社内で密かにクソ女呼ばわりされるほどのワンマンな上司だったのです。
当然アンドリューは猛抗議するものの、マーガレットから、あなたと私は一蓮托生。私が国外退去となれば、あなたも後ろ盾を失ってやがて会社から追い出される運命のあるのよと恫喝。編集者を目指していたアンドリューもこの脅しには屈服する他はありませんでした。
後日移民局にふたりで出かけて、婚約を報告。担当者から偽装結婚の疑いもあるので、結婚の実態があるかどうか調べて、正式な夫婦と認められるものの、偽装がバレるとアンドリューにも実刑と巨額な罰金刑が下されるという、凄くリスキーな決断であったのです。
ふたりの目論見は、結婚が認定されて、マーガレットの永住権が確定されたら、即離婚するというものでした。
先の展開が見ているような展開に、大異変が起こるのは、アンドリューの実家で突如決まった結婚式の時。
居並ぶ大勢の来賓や、移民局の調査官を前に、マーガレットは真実をばらしてしまうのです。それは、アラスカの大自然と、アンドリューの家族の優しさに触れ、それにも増して、アンドリューへの愛もうすうす気付いて、彼と家族にこれ以上迷惑をかけられないと彼女は考えたのでした。
結局、移民局のスタッフの元、マーガレットは即時国外退去となります。ここから先は『27のドレス』のような展開となるわけですが、明かすと野暮なので、内緒にしておきます。
本作は、アラフォーやキャリアウーマンの結婚に背中を向けた生き方や会社での希薄な人間関係などを映し出して、ちょっとした現代社会の風刺にもなっている作品です。
資産家のお坊ちゃまだったアンドリューに嫁ぐのは、嫁になるので、タイトルどうり『婿になる』わけでは、ありませんでした。
原題の『THE PROPOSAL』の方が分かりやすいですね。