「ちよっと都合良すぎでは?」新宿インシデント こもねこさんの映画レビュー(感想・評価)
ちよっと都合良すぎでは?
日本の暗黒社会の中の中国人を描いたものとしては、とても示唆に富んでいるし、大変興味深いシーンも多い作品だとは思う。しかし、そちらに視点を向かせるために、都合いいようにストーリーを組んでいるように見えた。
中国から日本へ密航してきた主人公は、最初は真面目に働こうとするが、昔の恋人がやくざの妻におさまっているのを見るや、突然、悪の世界へと方向転換する、という物語の本筋の導入じたいが、ちょっと単純すぎるし、日本のやくざ側の裏はありながらもあっさりと中国人たちへと縄張りを譲るというのも、ちょっと話がうますぎる。法律の縛りがあるとはいえ、もう少しこの時点で抗争があってしかるべし、だろう。
そして、主人公と刑事との友情のはじまりが、ラストシーンにもう一度現れる、という演出も、ちょっとわざとらしく、興ざめしてしまった。ちょっと工夫が足らなさすぎる、という感想をもって、映画館の席をたった。
ただ、落ち着いて考えると、香港映画では、この程度の単純な物語の流れはよくあることだ。この作品に関して、評価の高い記事を目にしていたことと、日本が舞台なので日本映画のような気分で見ていたから、ちょっと辛い点数になったのかもしれない。香港映画全体から見ると、レベルの高い作品なのだろうか。それを考慮したのと、後半の抗争アクションの迫力で、10点ほどアップさせてみた。
ちなみに、主人公役のジャッキー・チェンは、いつものアクションを封印したせいと、ノーメイクに近かったせいもあるが、顔つきに生き生きとしたものがなく、やたらに老けた印象をうけた。あのスターもこのまま終わってしまうのか、と不安を感じている。
コメントする