「打ち破れ!!」ゾンビランド ダックス奮闘{ふんとう}さんの映画レビュー(感想・評価)
打ち破れ!!
新しい才能、ルーベン・フレッシャー監督が、「ソーシャル・ネットワーク」のジェシー・アイゼンバーグを主演に迎えて描く、まさしく荒唐無稽のゾンビ映画。
これまでゾンビ映画の巨匠たちが培ってきたゾンビ映画の風格、伝統、雰囲気を一旦打ち崩し、徹底的に面白さを追求することに全身全霊を込めた意欲作。現代を常に他人事のように見つめ、静かにあざ笑う風潮をもった現代人だからこそ、恐怖を飛び越え、現実的にゾンビとの対峙を考える作品が生まれたのかもしれない。
他人との深い接触を拒絶し、自分のみを信じてゾンビが支配する世界を生き延びてきた主人公。そして、旅の中で出会う仲間達。破天荒にゾンビたちを打ち倒していく格好良さに作品全体が覆われているように当初は感じられるが、物語が進むうちにその魅力は、不思議な共感に変わっていく。
ゾンビは、私達にとっての「他人」の象徴として立ち現れてくる。夢の象徴である遊園地に土足で踏み込み、束の間の幸せを力ずくでぶち壊す。トイレのようなプライベート空間にまでずかずか踏み入り、がじがじ人間達を噛み尽くす。ハリウッド・スター、ビル・マーレイにゾンビを演じさせたのも、メディアという夢の中にも、全く意味不明な「他人」が潜むことへの、小さな恐怖が見えてくる。
それでも、主人公達はゾンビという名の「他人」を徹底的になぎ倒していく。夢のアトラクションを使って、可愛いぬいぐるみに囲まれて。どんなに怖くても、意味が分からなくても、ぶつかれ。打ち破れ。その先にしか、答えはない。ド派手な破壊劇はそのまま、現代に、理解できない他人に怖気づく私達への応援歌に変わっていく。
笑いにくるんで、ショットガンを猛然とぶっ放す爽快感にくるんで展開される物語を楽しんだ後に感じる充実感と小さな幸せは、きっと明日を生き抜く力に変わる。さあ、そんなところでうつむいていないで、この作品で思い切り笑おう。楽しもう。憂鬱も、不安も、打ち破れ!!