「【”人は何かに依存して生きている・・” ラブドールに心が宿ったファンタジックな設定だが、ココロに響く滋味深き作品。】」空気人形 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”人は何かに依存して生きている・・” ラブドールに心が宿ったファンタジックな設定だが、ココロに響く滋味深き作品。】
ー10年以上前の作品ではあるが、今観ても、全く色褪せていない事に驚く作品。
当初は、”随分、冒険したなあ、是枝監督・・”と思ったのだが、ラブドールを演じたペ・ドゥナさんの”心を得てからの”たどたどしい日本語の呟き
”私は、ココロを持ってしまいました・・”
”ココロを持ったので、嘘をつきました・・”
と言う言葉が、妙にココロに響くのである。
付け加えれば、ペ・ドゥナさんのたどたどしい日本語が、ココロの無かったラブドールが急にココロが宿った現実についていけないたどたどしさとの、見事なシンクロ度合いにも引き込まれた。ー
■印象的なシーンと少し心中で突っ込んだシーン
・レンタルビデオ屋の店員(ARATA:この頃は是枝組の常連であった)に恋したラブドール、のぞみが一緒にレストランに行った際に、隣の席のシングルファーザーが娘の誕生祝をするシーン。”誕生日って皆、アルンデスカ・・”
・望みの所有者(板尾創路)が、ココロを持ったのぞみの姿の変化に気が付かない事。
-当初、鑑賞した際には心中で大分突っ込んだ・・。我ながら、大人げない・・。未だ尻に蒙古斑がある若造だったなあ・・。-
・公園で老人が蜉蝣の話をするシーン。
”空っぽだけれども、卵はあるんだ・・。私はもう空っぽだ・・。周りにもそういう人間はいるよ・・”
-今観ると、生命についての深い会話である。-
・ビデオ屋でアルバイトを始めたのぞみが、棚整理の最中、落下して空気が抜けるシーン。ARATA演じるビデオ屋の店員が恥ずかしがる彼女の空気口から人工呼吸の様に空気を吹き込むシーン。のぞみの頬が紅潮している・・。そして二人は抱き合う。
・過食症の女性や企業の受付嬢が様々なストレスを発散する方法。
・度々、ペ・ドゥナさん自身の声で流れるモノローグ
”私は空気人形。性欲処理の代用品・・”
・自分を作ったラブドール製作者(オダギリジョー)の元をのぞみが訪れた際の二人の会話。
“お帰り” ”ただいま・・”
そして、廃棄品になったラブドールの表情に付いて語る製作者の言葉。
”ちゃんと愛されると、表情に出るんだよ・・”
のぞみの言葉 ”生んでくれて有難う・・”
-ちょっと、涙腺が緩む。-
・レンタルビデオ屋の店員の願いを聞いての、血まみれの情交シーン。そして・・。
過食症の女性が久しぶりに窓を開けて、下を見た時にゴミ捨て場に捨てられた望みを見て発した言葉。
”綺麗・・”
<近作品は、久方振りに見たが、奇想天外な設定を自家薬籠中の如く、見事な映像作品として成立させてしまう是枝監督の手腕には,唸らされるばかりであった・・。>
<2011年ころ、DVDにて鑑賞>
<2020年8月29日 別媒体にて再鑑賞>