「燃えるゴミと燃えないゴミ」空気人形 kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)
燃えるゴミと燃えないゴミ
当時、プチ韓国映画ファンでペ・ドゥナファンだったのに、日本でもあっけなく脱いだ。たしか『復讐者に憐れみを』でも脱いでるのですが、ヌードだけ記憶に残ってない。なので、是枝監督や一緒に風呂に入ってた板尾創路をうらめしく・・・いや、うらやましく感じたのは言うまでもない。やっぱり美しいドゥナちゃん。しかも撮影がリー・ピンビンということもあってか、美しい映像のオンパレード。ふぅーっと息を吹きかけるシーンだけでメロメロになってしまいます。
シネマサーカスという小さなレンタルビデオ店でバイトすることになってしまった空気人形のぞみ。店員の純一(ARATA)に恋をしてしまい、見知らぬ映画についても徐々に知識を増やしていく姿がまた面白い。『仁義なき戦い』推しの店長もいいし、ドンランド・ギメリヒ監督「西暦2万年」のポスターも笑える。寺島進が汚職警官の映画を好きなところも、テオ・アンゲロプロス作品を探す客も興味深い。そんな映画オタクぶりをも発揮した是枝監督。純一が映画のクイズを出すところで、『ブラック・レイン』!と答えようとした瞬間、のぞみの空気が抜けるというショッキングなシーン。その時のセロテープが最後まで貼ってあるのも微笑ましかった。
後半はどことなく群像劇的な描かれ方が施され、心を持ってしまった人形と世の中に失望している人間との対比が面白い。そして空気入れを自ら捨ててしまい、ご主人が新しい人形を購入。世の中には美しいものばかりじゃないんだ・・・と悲観したかどうかまではわからないものの、儚い命を自らの意思で生き抜こうとまで考えたのだと思う。そして純一とのロマンス。彼もまた空気の出し入れを楽しむ変態プレイがお好みだったのか・・・と、のぞみが彼のお腹からも空気が出るんじゃないかと子どもじみた考えで穴を開けてしまう。
美しいと感ずるのは人によって様々。幸せを感ずる瞬間も人それぞれ。オダギリジョーの役柄なんて、可哀そうな男たちに夢を与えてくれるラブドール作りの職業だ。だけど、そこには不燃物として再利用不可といった暗い現実もあり、最後には星野真里の「きれい」と言わしめるゴミ捨て場ののぞみ。カゲロウを美しいと思うかどうかも美意識の違いが存在していたし、歳をとることだって・・・
ダッチワイフ映画には『ラースと、その彼女』のように良作が多いのかもしれない。ただ、この映画にもちょい役で出演している柄本佑も『フィギュアなあなた』で体当たり演技をしているが、こちらはエロすぎてダメだった。