劇場公開日 2009年8月22日

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「リーアム・ニーソンのさえない表情とONになった緊張感ある表情に魅了されました。激しいアクションも魅力的。」96時間 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0リーアム・ニーソンのさえない表情とONになった緊張感ある表情に魅了されました。激しいアクションも魅力的。

2009年7月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 任務遂行のために、家族を犠牲にしてきた元政府秘密工作員のブライアンは、離婚した妻に連れられていった娘キムの為に、スパイ家業を引退して、キムとの関係修復に全身全霊をかける日々を過ごしていたのでした。
 それのなのにキムは友達とフランス旅行に出かけてしまいます。仕事柄、とても不安がるブライアンを口説き落として。
 しかしブライアンの不安は的中。旅先でキムは、人身売買を目的としたマフィアの一味に誘拐されてしまいます。
 タイムリミットは96時間。これを超えると永遠にキムは戻ってこれなくなると言う仲間の工作員のアドバイスを受けて、娘の救出のため、たった一人でパリへ向かい、強大なマフィアと対峙するというストーリーです。

 原題は「taken」。「24」を製作しているFOXなら、邦題の「96時間」のほうがタイムリミットアクションとしての本作にふさわしいですね。畳みかけていく緊張感は、「24」以上です。先日見た『コネクテッド』もアクションが凄かったですが、これも甲乙つけがたいくらい、凄かったでした。

 アクションだけでなく、わずか96時間で、誘拐組織を特定し、丸腰でアジトに単身乗り込んで、娘を救出するというあり得ない設定に、リアルティを吹き込んだシナリオが秀逸です。

 その前提として、ブライアンが特殊工作のスペシャリストで、各国の諜報機関ともパイプがあり、情報を得ることができること。そしてマーシャルアーツの達人で、一瞬で敵を倒してしまうほか、スパイ技能もトップランクであったことです。
 ひとたび邪魔する奴があたわれたら、銃撃戦や格闘でバッタバッタと敵をなぎ倒していきます。カーチェイスも、敵地から逃げ出すと言うよりも、蹴散らすという表現がぴったりのど迫力でした。
 そんなブライアンだから、キムが誘拐時に残してくれた携帯電話の音声記録だけを頼りに、敵のアジトを突き止め、乗り込んでいく課程も、プロのテクを見せてくれます。
 アジトでたとえ捕まっても、辣腕なブライアンは、一瞬の隙を逃さず、逆襲していくのです。そんな人物設定だからこそ、嘘っぽさを感じられなかったわけなんです。

 もう一つの前提は、ブライアンの父親としての強烈な思い。家族を犠牲にしてきた分、どんな犠牲を払ってでも、守らなければならないという贖罪の思いが、ブライアンを突き動かしていたのでした。その思いが、こと娘を誘拐したマフィアに向けられる時、鬼の形相で、非情なまでにエモーショナルな常識破りを連発するブライアンの思いが、あり得ないストーリーに説得力を吹き込んだのでした。
 だからこそ、娘と再会したときの、満面の笑みに、ああよかったねぇ!と、見てる方もジンときましたね。

 そんなブライアンの普段は、普通のどこにでもいそうなオヤジ。演じているリーアム・ニーソンリーアム・ニーソンは、ハパの時のさえない表情と、スパイ時代に戻って、ONになった緊張感ある表情を、別人に見えるくらい演じ分けています。さすが名優ですね。

 約90分の短めな尺のなかで、キギュッと濃縮したアクションが楽しめる、父子愛に感動する作品としてお勧めします。
 くれぐれも海外旅行は、お気をつけて。

流山の小地蔵