「ヒラヒラがついたテケテケを一体誰が怖がるというのか」テケテケ 因果さんの映画レビュー(感想・評価)
ヒラヒラがついたテケテケを一体誰が怖がるというのか
クソみたいな脚本とかクソみたいなCGに関しては「これ以下の作品なんか腐るほどある」の一言で封殺できるので敢えて言わない。一番の問題はテケテケの肢体についたヒラヒラのパーツだ。こんなものをつけた奴は一体どこのどいつなのか。こいつのせいでテケテケの恐ろしさが半減している。この手の日本のバケモノがなぜ怖いかというと、それはその姿形が我々人間とあまり大差がないからだ。彼らは我々とよく似ている。にもかかわらずその行動や出没や存在様式には大きな隔たりがある。近いはずなのに遠いという矛盾。ゆえの不安、恐怖。テケテケの場合、彼女(彼?)は基本的には我々と同じ姿形をしているものの下半身がない。下半身がない人間はふつう生きていられないが、彼女は違う。彼女は生きている人間を見つけるなり物凄いスピードで近寄り、そいつの身体を真っ二つに裂いてしまう。人間なのに、しかも下半身を欠落させた人間なのに、彼女は人間以上のスピードと殺意で人々を次々に惨殺していく。そこがテケテケの恐ろしさだ。それなのに本作ではテケテケに意味不明のヒラヒラがついている。テケテケは意図的に「人間」から遠ざけられ、根本的に我々と異なるものとして作品内に配置される。しかし我々はホラー映画が見たいのであって、怪獣映画が見たいのではない。ヒラヒラによって怪獣化されたテケテケなどにもはや微塵も恐怖は感じないのだ。何をそんな細かいことを…と思われるかもしれないが、神は、少なくともホラー映画の神は細部に宿るものだ。たとえば『リング』の貞子がすげえ今風のボブカットだったらどう思うだろうか。お前もう歌舞伎町のトー横でクライナー浴びてろボケと唾を吐きつけたくなると思う。そういうことだ。