「「世界で最も美しい」といったらこの方」裏窓 とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)
「世界で最も美しい」といったらこの方
顔だけでなく、スタイル、身のこなし、立ち振る舞い、そして恋する乙女のキュートさ☆
のっけの登場シーンから息を飲む美しさ。グレースさんが現れる度に、この狭いアパートがファッションショーの舞台と変身する。否、ただのファンションショーではありません。たった一人の観客=彼をいかに喜ばせるか、その悪戯っぽい笑顔にもノックダウンです。
リザはある事業(ファッション関係?)を手掛けるキャリア・ウーマンらしい。だからか、手作りのご飯でなく、いきなりケータリングで動けなくなっている彼をもてなす手際の良さ。唯一見せる手料理がコーヒーというのも生活感のないセレブ感満載。グレースさんがやると「やっぱりなあ」と納得してため息が出る美しさ。脱帽です。料理できんのかい!なんてつっこむ気もうせて観惚れるだけです。
だのに、彼から「君はお嬢様で、アウトドア派の僕には似合わない」なんて言われると、私にだってできるわよとばかりに、彼の手足になって”できる”ことを証明しようとし、はては他人の家に忍び込む。そのクールでエレガントな佇まいと、彼の為なら的なおきゃんでお転婆な女の子ぶりが、もうキュートでたまりません。ティーンエイジャーじゃなないのにねぇ。しかも初めは彼に合わせていたのが途中から自分の方が夢中になっちゃうなんて。そして忍びこむ時の振る舞い。「よっこらしょ」なんて言葉さえ心の中でイメージできないほど、のびやかな姿態。高々と上がる足。柵ってああやって越えるものなのね。う、足上がらん。
もう爪の先まで、どうふるまったら綺麗に見えるか計算しつくされた演技・演出。それを可能にする運動能力。これだけで動く美術品級です。
それなのに、彼に”できる”ことを認めさせつつ、彼一色に染まるのではなく、彼が寝てしまえば手に取るのはファッション誌。彼に合わせるけど自分は捨てないしたたかさ。実は最大のミステリーはこういった女性なのではないか(笑)なんてね。
そんな恋する乙女の心理描写だけでなく、主人公ジェフやステラ、窓から見える人々の描写が秀逸。主軸になるジェフ、リザ、ステラ、刑事、ラ―スと奥さん、以外の登場人物にもそれぞれストーリーがあってどれも手抜きがない。
正直”謎”自体は、カメラマンであるジェフの直感としても、サスペンスとしてはあまりにも唐突・強引すぎる。暇つぶしの妄想の範囲を超えていない。刑事が調査できないというほどに。あれだけで犯人扱いされたら怒るよ。実際に犯行が行われているとしても。
そんな穴だらけの”謎”なのだけれど、彼らの心理描写によって、また、場所と情報を限局されたことによる視野狭窄が妄想化を促進し、なんか納得させられて映画を観ている私達も「白か黒か」「これからどーなる???」とハラハラドキドキ。
特に最後のラ―スがジェフのアパートに侵入してくる場面は緊張MAXでした。
ヒッチコック氏は心理描写によるサスペンスが秀逸と聞きましたが、それを遺憾なく堪能させていただける映画です。
(脚本・演出・演技すべて良し☆5つ、音も変なバックミュージックがなく、日常の音をふんだんに使っているのだけど、そのすべてが計算しつくされて、緊張感が高まっていくので☆5つ)
と、ヒッチコック氏、サスペンス、映画の手法・演出を堪能する以外でも”恋する乙女”に立ち戻りたい時、ゴージャスの気分に浸りたい時につい観てしまいます。