劇場公開日 1955年1月29日

「主人公の目線は、観客のそれと絶妙に一致する」裏窓 ぐうたらさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0主人公の目線は、観客のそれと絶妙に一致する

2019年7月28日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

楽しい

怖い

知的

一言で表すと「裏窓から他人の暮らしを覗き見る」本作は、そう聞いただけでかなりアブノーマルで悪趣味な印象を受ける。が、何度か鑑賞していると、実はこれ、脚を怪我した主人公の目線は劇場観客のそれと完璧に一致し、向かい側に望むアパートはさながら劇場の舞台か、あるいは映画館のスクリーンのようにすら見えてくる。つまり、自分の気分や趣味嗜好に合わせて視点を自由に移動できる点も含めて、映画『裏窓』は、「映画鑑賞」という行為をメタ視点で見つめたような作品なのだ。

だが、いつまでも「こちら側」と「あちら側」と分離して守られているわけにはいかない。主人公はいつしか意を決して境界線を飛び出し、あちら側へとダイブ。客席から舞台やスクリーンへ飛び出していく(ような)常識破りの展開こそ、本作の最もダイナミックなところだと思うし、ヒッチコックの優れた発想力の賜物だ。世界をこれほどコンパクトにまとめあげた作品は他にない。

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牛津厚信