劇場公開日 2010年2月6日

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「人生とはまったくもって不合理なもの。」抱擁のかけら あんゆ~るさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0人生とはまったくもって不合理なもの。

2010年2月14日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

幸せ

2009年スペイン映画。128分。今年10本目の作品。「嫌いな」映画監督の名前といえば真っ先にあげるのはデンマークのラース・フォン・トリアー。そして2番目に躊躇なくあげるのが本作の監督、ペドロ・アルモドバル。

内容は;
1、かつて映画監督だったが失明し現在は脚本家で生計を立てている男のもとに一人の若者が訪れる。
2、若者が去った後に男は助手に頼んで14年前の写真が入った引き出しを見てくれと頼む。
3、そこには若者が写った写真と、そしてもう一枚、美しい女性の写真があった。

日常生活に当たり前のようにある人間の悪意とほんの出来心が、アルモドバルの他の作品と同様、本作のドラマを力強く動かしていきます。本作での悪意とは嫉妬や独占欲。そして出来心もまた嫉妬であり、罪悪感から生じるものです。

人が生きていくうえで自然と蓄積されていくそれらの心の悪は、たぶん私たちの大半は知ってて知らないふりをしながら日々を生きている。アルモドバル監督の作品と向き合うというのは、その悪との対峙をするための契約をお金を払ってみることだと思います。

そしてそんな嫌な思いをする作品なのに、トリアー監督同様、このアルモドバルの作品もお金を払って観る価値があります。

若者のころは心も体も成長し世界が無限のように感じられる。しかし、青年期が過ぎると人生の時の流れは次第に鈍くなり、そしていずれ止まってしまう時が来ることをひしひしと無意識で感じるようになる。

アルモドバル監督の描く「邪悪」なものとは、そのような大人たちが抱える人生の倦怠感を憂さ晴らしして、ちょっとでも若返る夢を見たいと願うことから生まれる。そして、その邪悪さが人の理性が油断した瞬間に出来心としてそそのかしドラマを動かしていきます。

本作を見にきたお客さんの7~8割は女性。そして、どうしてここまで悪意のある人間たちを描いているのに女性は引きつけられるのか、という所にもこの監督さんの作品を「それでも」と観る価値があるのかが分かりました。

ちなみにエンディングは他のレビューアーの方がおっしゃっているように美しいです。この美しさで人生はなにも邪悪なものだけではないと思い、救われました。

あんゆ~る