「大人になるための自然。」ユキとニナ ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
大人になるための自然。
新たな試みに彩られた、不思議な作品だった。
簡単な場面設定とアドリブ演技で成り立った映画。
子供たちの演技がかなりの自然体で(当り前だけど)
作られた不自然さがないのが見所だが、
普通に演じられてきた演技というのに観慣れていると、
素の方が不自然に感じられてしまうのが面白い。
両親の離婚。というかなりドラマチックなテーマだが、
印象的な音楽を流すでもなく、わざとらしい台詞もなく、
もし普通の子供だったら、こんな時どんな反応をする?
という、ちょっと自分や子供達に当てはめてみたくなる
映像や感情面の描かれた、そんな作品である。
フランス人と日本人の間に生まれたユキは、母の離婚に
伴い、慣れ親しんだフランスを去り、母親の実家がある
日本へ連れて行かれることになる。親友の二ナ(面白いv)
と別れたくないし、第一知らない国になど行きたくない。
既に両親が離婚している二ナは、この事件を自分の悲劇
と同様に捉え(あるよな~きっとこういうの)なんとか二人で
ユキの両親を仲直りさせられないかと手紙を書いてみる。
子供たちの真意に号泣する母だが、そこは大人の問題。
父母の溝が埋まることはなく、日本に連れて行かれそうに
なったユキは、二ナとともに家出を決行する。。。
なんかすごく、ありえそうな話だ^^;
そして家出なんかも、子供なら即やりそうなことだ。
考えられる全ての範疇を出ていない展開であるのだが、
なぜかこの子たちの「悲痛なのに明るい行動力」に
こちらまで励まされてしまうのだ。子供って、すごい。
勝手な行動をとっているのは、まったく大人の方である。
後半のフランスと日本の「森」でのシーンから、やや話は
ファンタジー化してくるが、双方の良いところを見せようと
気張ったら、ああなってしまったんだろうか…^^;
ともあれ、どちらの世界にも馴染めるのはやはり子供だ。
大人になると、まず頭で考えてしまう。
アドリブを要求されても、そこまでの経験上、どう反応し、
どう動けば良いのかは、おおよそ見当がつく。
だからアドリブが笑いや演技として成立してしまい、
流れを損なわない面白さを生み出せたりもするが、
例えば動物や子供相手ではなかなかそうはいかない。
母親の号泣や、友人との対立、一人ぼっちでのシーン、
ユキの即興演技そのものが彼女の成長と重なってくる。
あぁ…そうか。子供ってこうやって大人になったんだ。
かつて自分も経験したことなのに(立場は違えど^^;)
すっかり忘れてしまっていたあの頃の「素」晴らしさを
もう一度画面から発して体感させてくれる作品なのだ。
(お婆ちゃんと子供達、今時あんな??という懐かしさ^^;)