劇場公開日 2020年1月17日

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「映像面、および大胆な展開をするストーリーをまとめ上げた細田守監督の才能にはただならぬものを感じました。」サマーウォーズ 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0映像面、および大胆な展開をするストーリーをまとめ上げた細田守監督の才能にはただならぬものを感じました。

2009年7月14日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 信州上田の田園風景が拡がる、お城みたいな大きなお屋敷を舞台に、お屋敷に持ち込まれたスーパーコンピューターのネット空間で繰り広げるバーチャルな戦いと、お屋敷の大家族の中の人間模様が複雑に絡むという、きわめてアナログな世界とバーチャルな仮想タウンでのバトルを絶妙にシンクロさせたストーリーなんです。さらに、バーチャル世界のバトルは、次第に現実世界にも影響が及び、一族の要となっていたお婆ちゃんの死を招くことにつながり、さらには宇宙空間にあるむ衛星が、原子力発電所目指して墜落を始めて、主人公とお屋敷の一族の生命のピンチを招くという予測不可能なストーリーに魅了されました。
 さらには、ラブコメの要素も加わり、最後にはすっきりハッピーエンド。夏の1日の大騒動も終わってみれば、すごくさわやかなで、アナログ的な温もりを感じさせました。昨年のスカイクロラを見終わったとき感じた、殺伐とした刹那さと比べれば大違いです。
 きっと、キャラクターの人間味、そしてなりより田舎の大家族の人情とそれを見つめていたお婆ちゃんの包み込むような愛情が、作品全体に暖かみを醸し出していると思います。
 片方で対極的なバーチャル空間での奇想天外な展開がパラレルで進行されも、人間ドラマとして最後まで崩れることはありませんでした。
 こういうアニメ作品では、珍しく試写会場で大きな拍手に包まれて終了しました。

  mixiを3Dの仮想空間に置き換え、なおかつショッピングやエンターテイメントが記事体験でき、さらには公共機関の窓口に医療データベースまで管理しているスグレモノ。ユピキタス社会が実現していたのです。

 部室でバイトに励む健二たちに、バイトしないかと声をかけたのがOBの夏希。あこがれの先輩の誘いに二つ返事で答えた健二は、連れられて出かけた信州上田の夏希の実家にきて、びっくり。なんとバイトとは夏希のフィヤンセ役だったのです。
 この設定だけでも結構どうなのかとドキドキものでしたが、畳みかけるように、次々問題が発生します。

 健二にメールで、映画『ノーウイング』ででくるような意味のない数字の羅列が送られてきます。それを解読すると、なんとOZでの自分のアカウントが乗っ取られて、アクセス不能になるばかりか、OZそのものがハッキングされて、バーチャル格闘場となってしまうのです。
 そしてOZを乗っ取った張本人はなんと、乗っ取られた「自分」でした。健二は、夏希の陣内一族の協力を得て、OZを支配する「自分」とバーチャル世界での対決に乗り出します。
 ここで面白いのは、OZのアカウントはアバターで表現されいるのですが、アバターハッキングしてを吸収するほど、強大なパワーをこの世界で持てるようになることです。そして4億ものアバターを吸収した巨大な敵に、健二と陣内一族たちのアバターは歯が立ちません。そこで夏希が思いついたのは、なんと陣内家伝統の遊びである花札の「こいこい」。お互いのアバターの数をかける「こいこい」勝負で、OZを支配する敵のアバターを奪う賭に望むのでした。
 「世界のおわり」がかかったこの「こいこい」勝負の顛末は、ぜひ画面で。意外な助っ人の登場で、ほろりとするかもしれませんよ。

 ラストで夏希と健二が手を握り合うシーンがとても爽やかに思えました。

 製作したマッドハウスは得意の精巧なアニメ描写に加えて、バーチャル空間ではWindowsVistaのエアロような透けるタッチなんです。パステル調の色使いと相まって、未だ見たことない美しい色彩空間を作り込みました。ハリウッドの3Dアニメとはひと味違う、日本アニメの独自に進化した表現スタイルではないかと思います。

 映像面、および大胆な展開をするストーリーをまとめ上げた細田守監督の才能にはただならぬものを感じました。俄然前作の『時をかける少女』を見たくなりましたね。
 本作も、ぜひご覧になるようお勧めしますよ。

流山の小地蔵