「拡がらない世界」サマーウォーズ かみぃさんの映画レビュー(感想・評価)
拡がらない世界
自ブログより抜粋で。
--
作品の概要を知ったときからうっすらと懸念していた不安が的中してしまった。
出来が悪いのかと訊ねられたら「いや、素晴らしい」と答えるし、つまらないのかと訊ねられれば、「いや、面白い」と答えよう。そういう意味では満足度の高い快作に仕上がってる。
でも、好きかと訊ねられたら、「うーん、嫌いじゃないけど」という歯切れの悪い答え方しかできない。
本家の屋敷に大家族が一堂に会する様は田舎育ちの自分にも懐かしい風情だし、近未来を見越したネット上の仮想世界OZにも抵抗はない。
そういった世界観は素直に受け入れられるんだが、ご都合主義がつきまとう物語の組み立てに、どうも冷めてしまう。
映画の冒頭からして主人公も憧れる校内のヒロイン的存在の先輩からフィアンセ役を頼まれて田舎へ旅行という、男子の妄想全開のベタな話。
まあそれは物語の導入だから、それありきの映画と割り切るにしても、二人が訪れた先の親戚一族がねえ。
一族が力を合わせて世界の危機を救うというプロットから予想されたとおり、ドラマツルギー的に“必要とされる人材”を逆算して、親戚として配置される。
OZ内で腕をふるう格闘ゲームチャンピオンとか、スーパーコンピューターを用意できる電気屋さんとか、はては国防情報を盗み聞きできる自衛隊員までそこに配置されているわけで。
監督のやりたいことがわからないわけじゃない。
普段はバラバラの生活を送っている人々が、いざ一大事が起こったときにはそれを乗り越えるべく一致団結して、それぞれの得意分野で力を発揮する様を見せたかったんだろう。
そういうコミュニティの象徴としての“親族”ではあるが、この映画が血のつながりにこだわっているわけでないことは、クライマックスの展開ではっきり提示される。それは今、そしてこれからのネット社会でのコミュニティのあり方を示唆するものだ。
しかし、その提示のタイミングも少々遅すぎた。
追い詰められるまで引っ張ってから、一気に拡がる“つながり”の逆転劇によって感動を誘うという計算が裏目に出て、実質的にそこに至るまでの物語ではやけにこぢんまりした身内内の話に終始してしまった。
テーマとして“つながり”を見せたいなら、血縁というつながりはもっと早くに取っぱらうべきだったように思う。血縁にこだわらず、展開の中で、最初は見えなかった“つながり”へと拡げていくべきだった。
身内内で手に負えなくなったら、隣近所が助け合う地域コミュニティがあるじゃない。例えば電気屋さんなんてそこで初めて登場すればいいわけで。
おおらかな田舎を舞台にしながら、そういう“地縁”コミュニティを完全に無視していることにも違和感を感じた。
“つながり”とは言い換えれば世界の広がりだ。
しかしこの映画は親戚・家族という枠に囚われすぎて、ものすごく狭い世界しか描いていない。