「まだ間に合う」サマーウォーズ Takehiroさんの映画レビュー(感想・評価)
まだ間に合う
将棋の駒の動かし方くらで十分で花札は知らなくても良いのだが、のっけから大学生の婚前交渉、婚外交渉、フリーセックスが笑いながら語られるという皮肉なスタートのアニメ映画だったが、観ているうちに泣けて来る、中身のある映画だった。いざとなるとコンピュータ技術を知っている人が助けてくれるのが現状だが、その構造の中でもある部分、それは重要だったが、挑んだのは高校生の美少女と信用を授ける世界の人達だった。最後にコンピュータの知識人が英雄になるというのは、正直癪に障るが、それが現実だ。しかし、コンピュータネットワークのネットワークが乗っ取られたら社会が機能不全になると言うのは、既に、蒸気機関の発明とか、電気の発明とかそういう時代から人類の宿命となってしまっていたのだ。でもそれぞれの協力者の出来る範囲で解決のジグソーパズルのピースの一つになっている。崩壊の原因も、世界中にある原子力発電所のどれかにネットからの操作不能から現実の物理的破壊の重力を持つ人工衛星が堕ちるというものだった。そして時間。間に合うか間に合わないか。時間。それも現代の意識を弄ぶもの。こんなに未来的な話でありながら、バックボーンには、封建だと現代人に嫌われる家柄の見直しがある。一族の団結。そして主人公は高校生という初々しい憧れが、生涯の伴侶との結ばれのような予測がある。それは、一族を背負って立ってきた気丈な祖母の遺言でもある。家族の承認と永遠の伴侶。それが現代の崩壊シーンの中で問い掛けていた。キスシーンだってマウスツーマウスのディープなものではない。一族がはやし立てても、緊張で出来ない。むしろヒロインのほうが主人公の頬に軽くキスをすると、主人公は鼻血を大量に出して倒れてしまうのだ。珍しく新しい映画の中では良作だと思う。もっと堅物にしても良いくらいだが、抑制は十分、今の性倫理崩壊状況の中では効いている範囲だと思わねばならないし、祝福でもある。細田守監督が年齢的に同級生だったのを知った。アニメ
の『時をかける少女』の監督だった。この作品もとても良いものだった。他の作品は知らないが、性倫理も節度を保つ認識を予想されるし、温故知新併せ持つような、良心的なイメージを持った。これを書いている時にはNHK朝ドラで『ひよっこ』に出演している、沢村一樹と佐々木蔵之介も年齢的に同級生たちが良い演技をしているし、同年代が随分頑張っているのに、私自身はしょうがないなと言う気もしながらコメントを書いているが、私は私自身の能力までしか発揮出来なかった。仕方が無い。他人は出来ない事が出来るのだ。だが、そう思いながら、このアニメ映画の中の人達が、それぞれの個性を活かしていたのが思い出された。むしろ足を引っ張ってしまった人達でさえも、展開がスリリングになり、リカバリーされているし、恨みを残していない。日本テレビで放映されていたのだが、このアニメ映画は、トラウマで性と暴力に汚れまったトラップな人に騙されて汚される前の、真面目で純粋な高校生や大学生が観たら日本も回復するかも知れないと思えた。今の世界のトップはもう観ても手遅れなのかも知れない。現実にはあんな大混乱が起きたら死者が出ないわけがないのだが、死者さえ出さない物語にしてあった。厳密にいうと、一族の重要な祖母が一人死んだが、貴重な遺言が一族の団結を高めた。私の力でしか書けなかったが、計算された深いヒューマニズムあるアニメーションだったと思う。観て良かった。