「オープニングは、すごくスタイリッシュで本編を期待させるものでした。しかしあまりにおバカな敵キャラに女好きのヒーローには幻滅しました。」ザ・スピリット 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
オープニングは、すごくスタイリッシュで本編を期待させるものでした。しかしあまりにおバカな敵キャラに女好きのヒーローには幻滅しました。
赤色だけは残し、白黒二値にコントラストを強調し、スローモーションでヒーローの颯爽とした動きを強調するオープニングは、すごくスタイリッシュで本編を期待させるものでした。
「シン・シティ」「300」と進めてきたフランク・ミラー監督のモノクロームな世界観は、本作でパートカラームービーとして進化したものといえるでしょう。
この映像でもって、ガブリエル・マクトの渋い声とともに、『ダークナイト』のような世界観を展開すれば、絶対に名作となったことでしょう。
街のスピリットとして、街を愛し、平和を守る気持ちは、バットマンにも劣らないし、一回死んでいる不死身の存在として、バットマン以上の活躍が可能であったはずでした。
けれども敵役がお馬鹿キャラを揃えたため、スタイリッシュでシリアスな映像とは、多にミスマッチなものになってしまいました。
ボス格のオクトパスは、けばけばしい出で立ちに、濃い性格のキャラ。ちょうどバットマンの旧シリーズにイメージが繋がります。そして、オクトパスのクローン技術によって作られた手下たちはどれもそっくりで一様におバカなんです。
そしてオクトパスもなぜか不死身で、スピリットとどんなに死闘を繰り広げても、いつもの碁敵が相対しているかのように決着がつきません。勝負のつかないバトルシーンなんて面白くないなと思いました。
オクトパスとスピリットがなぜ不死身となったのかそのいきさつは、物語の進行とともに明かされます。それはそれで何とか納得できる筋が用意されているのでいいのですが、問題はスピリットの女好き。一度は死んで成仏しているはずなのに、このゾンビみたいなヤツは、まだ生臭で、美女と見るや口説いてしまうのです。死んでも直らない女癖というのは、まさにスピリットものことを指すでしょう。
生前の婚約者であって、今でも相思相愛の外科医エレンの目の前で、昔の恋人であり今は宝石泥棒になったサンドを抱擁し、キスするところを見せつけるなんてどんな神経をしているのでしょう?石田純一でもびっくりするようなヤツなのです。ヒーローが「ナンパ師」なんて、ヒーロー映画としては存在が軽すぎやしませんか。エレンの父親かつ元上司のドーラン刑事がスピリットを、エレンの父親として娘に近づくなと目の敵にするのも解ります。
そんな彼を大きな愛で包み込んでいて、文句も言わず私だけが彼を治せるのと治療するエレンのけなげさが引き立っておりました。
そんなわけで、スピリットに絡む美女の演出にも力が入っております。ドーラン刑事の部下の女刑事とか、敵役のオクトパスの部下、そして早くこっちに来てと手招きしている死に神すら、スピリットに魅了されていて、そのコスチュームも、大きく胸元が開けていたりして、官能的なもの。モノクロな本作に華を添えていました。
それでもスピリットが、本気で惚れているレディとは、実は彼を育んだ街、セントラル・シティなんだという設定には共感できましたね。
続編もできそうな展開で終わったため、次はもっと街を愛するところをもっと見せてほしいと思います。相棒の子猫にもご注目を(かわいい脇役)。