劇場公開日 2009年9月12日

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「シェイクスピア悲劇を思わせる大胆変更。見応えアリの野心作。」TAJOMARU 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5シェイクスピア悲劇を思わせる大胆変更。見応えアリの野心作。

2009年9月14日
フィーチャーフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

楽しい

怖い

三船敏郎が演じた多襄丸を、人気若手の小栗旬が演じる——
黒澤明の無敵の傑作『羅生門』に惚れ込んだ者ならソッポを向いてしまいそうな所だが、そんな人がいる事は監督だって百も承知。全く異なる展開で楽しませてくれる。

監督は小栗旬出演の舞台を観て彼を起用したそうだが、成程、物語の構成や人物配置はまるでシェイクスピア悲劇。小栗は欲に駆られた者共の泥仕合に巻き込まれてもがく、純真な男の役だ。黒澤やシェイクスピア作品ほどの“深み”は臨めないが、練られた展開と派手な立ち回りで見応えはなかなかのもの。若手の多起用やスケールの乏しさによる“軽さ”も、萩原健一や松方弘樹の圧倒的な貫禄でどうにかカバーしている。

だが欠点はある。
多襄丸一味の義賊っぷりは陳腐すぎる上、その後の展開を思えば描き込み不足。お白州のシーンも冗長だったり、全体的にテンポが悪い。何より音楽の安っぽさは問題で、洋楽の起用なんてあまりに安直だ。
肝心の小栗旬も、感情の昂ぶるシーンはなかなかだが、“静”の演技にまるきり説得力が無いのが惜しい。

とまあクドクド書いちゃったが、毛嫌いして見逃すには勿体無い、なかなかの野心作かと。小栗ファンならランク+1ですかね。

浮遊きびなご