「こじんまりとしたいい脚本と演技」サンシャイン・クリーニング Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)
こじんまりとしたいい脚本と演技
総合:75点
ストーリー: 80
キャスト: 75
演出: 75
ビジュアル: 70
音楽: 70
本作は喜劇ということだが、重い映画ではないにしても決して喜劇というほど軽くはない。きつい場面の直接描写を避けたりしてあまり深刻になりすぎないように注意をしつつも、しっかりとした物語である。
高校時代はみんなに羨まれる花形だったのに、今では貧困の中で母子家庭でやっと子供を育てるだけの身分。頼りにならない家族がいて、昔の彼氏と都合のいい情事の相手にされて不倫をしてても将来など何も見えない。それでも機会を見つけて、今度は母親が死んだときのような、死者の後片付けという厳しい仕事をしてなんとか這い上がろうと努力する。それはただの仕事だけとは言いきれず、母親を失った姉妹の心の傷があるからこそ、仕事への意義も見出せるというもの。
そんな主人公の成功と成長の物語かと思いきや、現実は厳しく単純ではない。特に奇跡など起こらなくてほろ苦さがある映画だが、同時にささやかな希望なども見えて、思わず応援をしたくなる。これを機に、学生時代の栄光や当時の彼氏や母親の悲劇などの過去をいい意味で断ち切って、少しずつでも自分なりのやり方で前に進んで欲しいものだ。
制作費がわずか5百万ドルというかなりの低予算映画だそうで、実際金のかかってなさそうなありふれた日常風景ばかりが続く。5百万ドルといえば、大作ならば主演俳優の出演料のさらにほんの数分の一にしかならない額。だが低予算だから現実離れしていない身近に感じるいい物語が出来ることもある。アルバカーキという地方都市の地味な雰囲気が、このささやかな物語を映画にするのに合っていると思った。
主演の姉妹のエイミー・アダムスとエミリー・ブラント、過去にはアカデミー賞やらゴールデングローブ賞やらにノミネートされていて、演技力が評価されているらしい。過去の出演作の経歴見ると、そういえば見たことある作品がいくつかある。この作品でも地味だが堅実ないい演技していました。