「レスラー…80年代男の哀愁」レスラー BARCA6969さんの映画レビュー(感想・評価)
レスラー…80年代男の哀愁
プロレス好きなら当然知っている名作「レスラー」。ミッキーロークがかつての名声を取り戻した作品。
最近、地上波初放映だったんで録画しといた。
くだらない番組が多い中、たまに深夜でいい映画やってるので嬉しい。
ロークと言えば、ナインハーフでは色気出しまくりで氷を使った技…頂きました。
そして、タイソン戦の前座での猫パンチ…。
以降、映画界では話題にもならなかったが、この作品で男の情けなさと哀愁を見事に演じた。
ストーリーは、かつての伝説的人気レスラー、 THE RAMが、落ちぶれドサ回り。ドーピングの影響で命の危機を感じる中、別れた娘との愛、魅かれるポールダンサーとの恋を掴みかけるが、小さな幸せを捨て、仲間とファンが待つリングを選ぶ…みたいな古い漢のドラマ。
まあ、プロレス知らない人、若い世代には分からない世界かもしれない。
モデルとしては、WWF時代のサベージや今のHHH辺りなんだろうが、華やかな世界の陰と、ローカルなインディプロレスやロートルの哀しみも赤裸々に描く。
知ってはいるが、これがアメリカンプロレスの現実。ハードワークの中、レスラー同士リスペクトし合い、怪我しないよう助け合う。
相撲も似たような世界はあるが、陳腐化した言葉になってしまったが、ガチンコを残す日本の格闘技界の一部とは対極の世界。
ただ、テーマは現代に居場所を失う80年代の男の哀愁だな。
台詞の中に「80年代は良かった。GUNSやモトリークルー…。でも、90年代は最悪、グランジが出てきた…」みたいなのがある。
俺はハードロックも、ニルヴァーナのグランジもスラッシュも両方聞いて、好きな世代だが、時代の変化について行けない、ついて行かない人はいる。
あゝ、でもニルヴァーナのライブを観る前にグランジのカリスマは90年代の社会に潰されたわけだ。
で、流れる曲はAC/DC、RATT、何故かブルーススプリングスティーン。ツボはまりまくり。
今も現役バリバリのバンドも多いし、単純で分かりやすいいい時代だった。
でも、90年代、湾岸戦争後だが、志向が多様化、細分化し、アメリカを一つにまとめるものがなくなったんだな、分かりやすいヒールとベビーフェイスの闘うリング以外には。
で、ラストの伝説の試合のリマッチ。
ロートルの試合に観客が集まるローカル会場。
一度は求愛を拒絶したが、ラムの心臓を心配し会場へ車を走らすポールダンサー。
試合を辞めて、と叫ぶが、ロートルレスラーは俺の居場所はあそこだ、とリングに立つ。
そこで流れる入場曲はGUNSのsweetchild O mine. で、ズルッ。
まあ、いい曲だが…哀愁ないよ。
リング上で観客にロートルレスラーのプライドをマイクで語る。自分を選んだ女への決別でもある。
愛する娘、女を捨て、俺を待つファンの見守るリングのトップロープから決め技ラムジャム!
てなシーンでFIN。
結末は観てる人次第か。日本なら泣きながら男を待つ女と勝利の後に愛の抱擁…
エイドリア~ン って、今更ロッキーは、ない。
あれは時代の流れについて行けない古い男の死へのDIVEだな。
自分を唯一受け入れる安住の地への逃避でもある。
そして、俺には最高にかっこいい男の結末。