「【”孤独な哀愁漂う落ちぶれた中年レスラーの、”自己の存在意義を確かめるための”最後の戦い・・” どうしても主演のミッキー・ロークの俳優人生と重ねて観てしまう作品でもある。】」レスラー NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”孤独な哀愁漂う落ちぶれた中年レスラーの、”自己の存在意義を確かめるための”最後の戦い・・” どうしても主演のミッキー・ロークの俳優人生と重ねて観てしまう作品でもある。】
ー ミッキー・ロークと言えば「ナインハーフ」である。
NY、ウォール街で働く超美形の生活感のない”ヤッピー”男を演じた姿が、中坊であった私にとっては強烈で、ドキドキしながら観た目隠し&氷を使ってのSEXシーンは、”いつか、ナインハーフごっこをしたいなあ・・”などと、悪友たちと、TVにかじり付いて見たモノである。
おバカである。
その後、ミッキー・ロークは作品に恵まれず、映画業界からも完全に忘れられていた。
そんな状況のミッキー・ロークを主演に迎えたダーレン・アロノフスキー監督制作の今作。ミッキー・ロークの実人生に基づき、あてがきしたようなストーリーに魅入られた作品である。
ミッキー・ロークは今作出演のために、大幅に増量し、筋トレ、レスリングの基本技も習得したという記事を読んだ記憶がある。(違っていたら、申し訳ない・・。)
今作は、所謂、役が俳優に憑依する映画の一本であると思っている。ー
◆感想<Caution 内容に触れています。>
・1980年代に、一世を風靡したレスラー”ランディ・”ザ・ラム”ロビンソン(ミッキー・ローク)が、寄る年波に勝てず、田舎町のレスリング上で戦う姿。
ー ”え、あのミッキー・ロークなの?”と思ってしまった程の、大きくなった筋骨隆々の体格。血だらけの格闘戦の数々・・。初鑑賞当時には、有刺鉄線デスマッチ当時の大仁田厚かと思ってしまった程である。ー
・台詞でも、”80年代ロックは良かった。ガンズ・アンド・ローゼスなど・・。それが、ニルヴァーナが出て来た90年代ロックは最低だ・・”などと言っている。
ー どちらも1980-90年代ロックの雄でしょう!ミッキー・ローク自身の栄枯盛衰を語っているようである・・。ー
・試合後に心臓発作を起こし、それがきっかけで、長年疎遠になっていた、娘ステファニーと漸く和解していくシーン。それをサポートする行きつけのストリップバーの幼き息子を育てるキャシディ(マリサ・トメイ)との友情と、それでも越えられない一線の描き方の巧さ。
そして、自分のだらしなさ故に、娘ステファニーに再び、“お払い箱”になってしまう。リングに戻る事も出来ずに、慣れないスーパーのお惣菜コーナーで働くランディの姿。
ー 一瞬であるが、娘と和解し思い出の海岸沿いの遊歩道を歩く姿や、廃屋で二人で踊るシーンは、沁みるなあ・・。ー
□”俺の生きる場所は、リングの上しかない!”と気付いたランディが、スーパーを辞め、ガンズ・アンド・ローゼスの”スウィート・チャイルド・オブ・マイン”が大音量で流れる中、リングに登場するシーン。物凄く、盛り上がる。
<ラスト、心臓の不調を感じながら、コーナーポストのトップに立ち、20年振りの因縁の相手アヤ・トーラー(彼も又、試合中にランディを気遣う言葉を掛けている・・。)に向かって飛翔した瞬間、アンディの脳裏を過ったモノは何であったのであろうか・・。
「ナインハーフ」の記憶がある中、今作を鑑賞すると、実に沁みます・・。>
この作品が公開された当時、映画評論家のRIRICOさんが涙ながらにこの作品を褒めていたのを思い出します。
レスラーという仕事。
壊れた家庭と娘との関係修復。
寄り添ってくれる女性。
そして身体的寿命。
これらがミッキーロークの人生を締めくくる一大イベントとなって行きます。
これは男のサガというべきか、選択ミスなのか?
どうしようもない岐路に、自分自身のことを重ねないわけにはいかなくなります。