「画面も心も揺れっぱなし。」レイチェルの結婚 ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
画面も心も揺れっぱなし。
女性ならでは(S・ルメットの娘)のきめ細やかな脚本と、
家族の崩壊(アメリカってホントこういう話が好きね)が
引き起こす悲劇を結婚という大舞台で見せてしまう作品。
結婚すれば当然、家族が増える。
すでに崩壊しかけている人間同士が他を認め、決断し、
一歩踏み出すまでをこれでもかと見せる異色作なので
嫌~な気分に苛まれる部分(苦笑いも含め)が何度もある。
おまけにホームビデオ形式?で撮られている映像は、
縦に揺れ~横に揺れ~ズームがかかり~が続くので…
かなりの画面酔いをもたらしてくれるのも必至。
最後まで観るのにけっこう忍耐が必要な作品である^^;
A・ハサウェイはこの作品で新境地を拓いた感じがする。
薄汚い恰好で、言葉遣いも酷く、手に負えない不良娘を
かなり等身大で演じている。とある依存症の施設から
姉の結婚式のため、一時帰宅を許された彼女だったが、
彼女の登場が穏やか(に見えた)家族の崩壊を一気に促す。
笑顔で出迎える家族や親戚一同は、このキムという妹が
遠い過去に引き起こした悲劇を嘆き、心では憎んでいる。
その罪責から逃れられないキムは、更生を望みながらも、
誰からも受け入れてもらえぬ鬱積を表にぶつける方法しか
とれず、結局は堂々めぐりの問題行動を起こしてしまう。
これ…多かれ少なかれ、どこの家庭にもある問題だと思う。
親の愛情の取り合いなど、兄弟がいれば必然的なものだし、
どちらかといえばそれ以前の、キムが依存症になった原因
の方が私には重要に思えた。D・ウィンガーが演じる母親に
しても、なぜそんな妹に弟の面倒を預けたのか(ダメでしょう)。
家族のだいたいの責任をすべて問題のある妹に押し付けて、
監督責任があった自分たち親の責任をすり替えていないか。
おそらくこの家族の崩壊は、過去の悲劇のずっと以前から
兆候を見せていたはずなのだ。
当事者が気付かない事実が、観客には読めてしまう悲劇。
だから常に必要なのが、第三者の視点。になる。
映画評論にも書いてあったが、父親の後妻である黒人の妻。
多くを語らず、表立った意見もしないが、キムのことを気遣い、
優しく見守るこのヒトの視点は、おそらく
現夫の不甲斐なさも、前妻の至らなさも、娘たちの我儘も、
ぜんぶ受け入れている。それをして家族なのだと体現する。
もしもこのヒトが最初からこの家の妻だったなら、
この一家は、違う方向へ向えただろうか。そんな風に感じた。
(親の愛情は必須です。愛されなければ愛し方も分からない。)