劇場公開日 2009年3月27日

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「ラストには、愛犬家であれば号泣してしまう感動シーンもあり、ペットと人との関係を深く考えさせられました。犬好きな人には必見の作品」マーリー 世界一おバカな犬が教えてくれたこと 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5ラストには、愛犬家であれば号泣してしまう感動シーンもあり、ペットと人との関係を深く考えさせられました。犬好きな人には必見の作品

2009年3月19日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 予告編からは、愛犬が暴れ回るドタバタコメディを連想していました。けれども『プラダを着た悪魔』の監督作品だけに、愛犬共に愛を紡む夫婦の家族のハートウォームな物語に仕上がっていました。
 ラストには、愛犬家であれば号泣してしまう感動シーンもあり、ペットと人との関係を深く考えさせられました。犬好きな人には必見の作品でしょう。

 物語は、ジョンとジェニーと新婚前夜から始まります。お互いが新聞記者の仕事に忙しいので、悪友の子育ての予行演習になるという薦めもありジョンは、ジェニーに子犬をプレゼントすること決めます。ジェニーを驚かそうと目隠しをしてペッショップへ連れて行ったものの、意外と子犬って高い!雌のラブラドール犬で300ドルもします。
 うーんと唸るジョンに、こちらはお安くなっていますよと進められたのが、チョット貧相なマーリーでした。それ以来ずっとマーリーのあだ名は「セールス犬」となりました。 生まれた時からいわく付きだったんですね。

 それにしても子犬時代から、期待に叶う暴れよう。訓練学校で教官をマウントしてしまうところやお手伝いさんが悪魔の犬!と罵って、トンズラしてしまうところは爆笑してしまいました。普通ラブラドールって温和しくて、礼儀いいのだけれど、訓練のたまものか思い切り駆け回り、人を見たら体当たりでじゃれつくワンちゃんでした。きっと人一倍人間が好きなのでしょう。45キロのワンちゃんに体当たりされたら、大変ですが(^^ゞ
 但し、もう少しマーリーの過激に暴走するところを見たかったです。

 マーリーの果てしない暴走にも、ジョンとジェニーでした。そればかりかジョンはマーリーとの奮戦記をコラムに書いたところ大好評で、コラムニストとなり給料も倍増します。そうなると二人は自然に子作りの夢を実現させようと「励み」ます。
 ここでは、ジョンの仕事に対する悩みとマーリーの自由奔放さが対比されていました。 名誉はあるけれど主観を加えられない報道記者か、自由気ままにかけるコラムニストかジョンは悩み職場を何度か変わります。チョット中途半端でしたけど。
 それでも浜辺で、規制を破ってマーリーをリリース。他のワンちゃんもつられてリリースされ、一斉に海に向かって自由になって走っていくシーンを見るに付けて、監督はジョンに自由になれと言いたかったんだろうと思います。凄くメッセージを感じさせるシーンでした。

 子育てのため、記者を止めてまで家事に取り組む、ジェニーでしたが、子育てとマーリーの面倒の両方をこなすことは大変です。
 とうとう農場にマーリーを預けてしまえとブチぎれたジェニーと口論したジョンは、マーリーをつれて悪友宅に転がり込みます。

 さてさて最悪になった二人の関係はいかに?というのが、このドラマの山場でしょう。結末は申しませんが、もう少し過激にぶつかってほしかったなとは思います。

 そして敢えてラストに触れます。
 老犬となったマーリーにはっきりと衰えが見えてきます。そんなマーリーを散歩に誘ったジョンは、マーリーにいつの間にかお互い歳をとったなと語ります。
 監督は、寿命の短いマーリーに、老いることのノスタルジーも語らせていたのでした。 ふたりが語り合う丘一面の秋のススキ野のシーンがとても美しく、儚かったです。

 あんなに家族に迷惑をかけたのに何故か過ぎ去ってみると、凄く愛おしくなる「セール犬」。実はコラムニストのジョン・グローガンが実体験を描いた実話なんです。それは単に「犬の映画」としては片付けられないメッセージを含んでいました。
 やんちゃなマーリーを受け入れて、寄り添いながら、共に時を刻んでいったグローガン一家の愛の物語だったのです。
 家族のいろんなエピソードが詰まりすぎていて、チョット描き足らずのところはあります。でも、最後のメッセージで、感動されるでしょう。
 あんなに苦労されられたのに、マーリーに愛されたことに感謝するのです。愛したのでなくて愛されたというのです。
 犬は、人を肩書きで差別しません。どんな人でも好意を示せば、分け隔てなく答えてくれます。そんな存在がどれほど有り難たいか気づかせてくれる作品でした。
 きっと見終わったらペットをぎゅっと抱くしめられることでしょうね。

流山の小地蔵