マーリー 世界一おバカな犬が教えてくれたこと : 映画評論・批評
2009年3月24日更新
2009年3月27日よりTOHOシネマズスカラ座ほかにてロードショー
ほどよくウェットなさじ加減に、ほとほと感服
バカ犬が引き起こすドタバタを描いた爆笑コメディか、泣かせる癒し系動物映画か? この作品は、そのどちらでもない。いや、どちらの要素もたっぷり含んではいるのだ。しかしそれ以上に、これは人生と家族、愛についての映画なのである。犬を愛し、犬に愛されて過ごした、平凡で素晴らしい人生についての。
マーリーは、かわいい。が、いざ飼うとなれば、そりゃもう迷惑千万なバカ犬! 巨大に育ってエネルギー過多な上、学習能力ゼロで制御不能。シャレにならないことも山ほどだ。でも、バカな子ほどかわいいというのもまた真実。誰がマーリーを責められる? 彼は生きる喜びを、家族への愛を全身にみなぎらせている。新婚夫妻のジョンとジェニーは、ときにキレたりうんざりさせられながらも、そんなマーリーと家族として一歩一歩、歩んでいく。子供たちをもうけ、どんな家族にも起こりうる、浮き沈みと成長を重ねながら。
そうした家族の悲喜こもごもに、きっといちいち共感させられずにはいられないだろう。特に犬好きでなかったとしても(犬好きならもちろん、たまらない!)。原作も傑作だが、映画としても極上の出来。何より素晴らしいのは、たとえ涙を誘う場面でもこれ見よがしなお涙頂戴に陥らず、静かな感動と幸せの余韻を与えてくれること。このほどよくウェットなさじ加減には、ほとほと感服なのだ。
(若林ゆり)