劇場公開日 2009年10月10日

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「同じ太宰治著作でも『ヴィヨンの妻』とは大違いだな」パンドラの匣 septakaさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5同じ太宰治著作でも『ヴィヨンの妻』とは大違いだな

2009年11月25日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

こりゃ、イイ映画だ
実に、抑えのきいた演出をされる監督さんだなぁ

『ヴィヨンの妻』を
先に鑑賞していました。

同じ太宰治さんですし、
重い内容になるのを覚悟していたのですが、
リーフレットどおり、とてもポップな内容でした。

原作は未読ですが、
ここまでポップにしてしまうと、
現実感が薄れ、コメディになってしまいそうなのですが、
そうなってしまわないところに、監督の技量を感じました。

生死、恋愛、自我意識。
押さえる所はキッチリ押さえてある。

ストーリーの組み立ても、
観客に息抜きをさせるための
タイミングもよく全く飽きが来ない。
当然、スクリーンから眼を離させない。

晴、雨。
昼、夜。
畑、小さい池。
そして、人形。

スクリーンのいたるところに
暗示、メッセージが隠されている。

特に、闇夜を照らす光の使い方には感嘆させられた。
また、終盤の人形を用いた恋心の表現からは、たった
数秒の行為なのに、女性から男性への一途で切ない心情が
ヒシヒシと伝わってきて、思わず胸を締めつけられてしまった。

ラストの展開にも驚いた。
まさか、ああなるとは、
選択肢の中のひとつではあるが、
わたしにとっては、意外な結末だった。

◇   ◇

主演の染谷将太くん。
オーディションで選ばれたそうですが、
演技よりも、むしろナレーションの上手さに感心しました。

朴訥とした語り口、
決して簡単じゃないはずですから。

一番驚いたのは、川上未映子さん。
芥川賞作家として有名。帰宅後知ったのですが、
なんとこれが映画初出演どころか、演技そのものが初めてだったんですね。

とても、信じられません。
セリフだけじゃなく、細かい仕草、
表情演技。すべてが、完璧でした。

あなたでなければ、竹さんは演じられません!!

★彡     ★彡

菊池さんが担当をされた
音楽も、とても良かったです。
作品に、別の彩を加えてくれていました。

ただ、気になることが。
パンドラの匣は誰の物が
開けられたのでしょうか?
それとも、開けられなかったのでしょうか??

septaka