「そろって仲良く地球を守れるか?」アベンジャーズ DOGLOVER AKIKOさんの映画レビュー(感想・評価)
そろって仲良く地球を守れるか?
監督:ジョス ウェドン
キャスト
マイテイ ソウ :クリス ヘミワース
ソウの弟、ローク :トム ヒデルソン
アイアンマン :ロバート ダウニー ジュニア
キャプテンアメリカ:クリス エバンス
ブラックウィドウ :スカーレット ヨハンソン
インクレデイブル ハルク:マーク ルファロー
ホーク アイ :サムエル ジャクソン
アメリカで最大の売り上げを記録しているコミックブック「マーベルユニバース」のコミックキャラクター スーパーヒーローが勢ぞろい、総出演して地球の侵略者と戦うお話。
まずは神の王の息子で、神々の国アスカルドから追放されたヒーロー マイテイソウと、弟のローク。第二次世界大戦のヒーロー、キャプテンアメリカ。普段はちょっと冴えない中年科学者だが 怒ると体が緑色で100倍の大きさの巨人になって 所構わず暴れまわるハルク。地球を守る使命をもった、SHIELDの片目のキャプテン、ホークアイ。アイアンマンを助けるブラックウィドー。天才科学者で原子力を使ったパワースーツで活躍するアイアンマン。みんな出てくるぞ。
世界一優れた漫画文化を持つ日本人は、アメリカのコミック誌が、いかにつまらないかを良く知っている。質の悪いぺらぺらの紙に、どぎつい色で印刷されたコミック誌をめくってみると、何かうらぶれた、しょぼい感じがする。物語性がないし、面白みにも欠ける。そんなコミック誌の収集家によってオークションで 高額で売られたり買われたりしていることが信じられない。新聞の日曜版に載っている4コマ漫画など おかしくも面白くも無いものばかりだ。
しかし、退屈だったアメリカコミックのヒーローに、命を吹き込んだのは、優れた映画監督達だった。「マイテイ ソウ」も、「ハルク」も、「アイアンマン」も 映画では実に生き生きとしたヒーローとして描かれて、映画で立派に活躍してくれて、成功した。
そんなヒーローたちが全員集合して 地球の敵と戦うのだから 面白くないわけがない。宇宙から 地球を征服する為に 異星人が、ゲジゲジ虫のロボットのような武器を、どんどん送ってきて ニューヨークなど徹底的に破壊されて見る影も無くなる。思い切り何もかもぶっ壊れて、ヒーロー達も、死にもの狂いで戦う。
全米でこの映画が公開された最初の1週間に3億ドル、世界中では合計8億ドルの興行成績を上げたという。この記録は これまで世界で最高記録だった「ハリーポッター」が公開された週の観客動員数を上回ったそうだ。
アメリカ人は本当にアクションが好きなんだな。誰もがみんなヒーローの登場を待っている。誰もがみんな 今の自分に不満をもっていて、ヒーローに救ってもらいたいと思っているのだろうか。
ヒーローたちは 自分がヒーローだから、他のヒーロー達と一緒に戦列に並ぶことに慣れていない。第二次大戦のヒーローキャプテンアメリカの 流行遅れの制服に身を包んでいる姿をちゃかして笑ったり、ハルクが予定よりも早く緑の怪物に変身してしまって、敵よりも味方を攻撃して、みんなが辟易してみたり、アクションの中にも笑いが、たっぷり用意されている。ヒーローのなかでも、アイアンマンが、最新科学と情報の豊さで、だんとつのヒーローなのだが、彼はあくまで金持ちの坊ちゃんで、基本的には自分と自分の秘書ぺッパーさえ安全ならば 他の事はどうでも良いと思っている。リーダーになって地球を救うなど、さらさら考えて居ない。ホークアイは、リーダーとして怒鳴り散らすだけ。ヒーローたちは、いつも一人で戦っているから チームワークができない。その点、キャプテンアメリカは さすがリーダー気質で メンバーひとり一人に指示を与えて、チームを統率する。
ヒーロー達の抗戦の甲斐あって、何とか敵を撃退させることができた。めでたし めでたしだ。
ところで敵ってなんだろう。前回の「スパイダーマン」でも「バットマン」でも、敵とは、正義とは何か が微妙なテーマになっていた。
スパイダーマンは 育ててくれたお爺さんに教わった、正しく生きる道を歩もうとしているが 自分の内部にある悪への魅力に振り回されていた。バットマンは 淡々と良き市民や両親を僅かな金のために殺すような理不尽な悪と戦ってきた。しかし弱いものが助けを求める声を聞いて、駆けつけてみると自分と同じバットマンスーツを着たニセモノバットマンがマスコミに脚光をあびるためにすでに出動している。悪とは何か、善とは何か バットマンは悩む。
ヒーローたちもただ やみ雲に戦っているわけではなくて自分の中の邪悪や通俗性に疑問をもったり、敵だと思い込んでいた相手にも一部の理があることに気がついたり 悩んだり、酔って馬鹿をやったりする。キャプテンアメリカにとって 敵とは敵国の日本やドイツだったし、インクレデイブル ハルクにとっての敵は「オレを怒らせた奴」だったし、アイアンマンにとっての敵とは 自分の会社スターク社の商売敵だろう。共通の敵などなかった。
私の敵は、あなたの敵とは限らない。アメリカの正義は 他の誰にとって正義なのか。アフガニスタンからの早期撤兵を約束して大統領になったオバマにコントロールの効かない現在の状況で死者ばかりが増えて、一向にアフガニスタンの治安状況は良くならない。シリアではアサド政権により、民主化運動が圧殺され、本格的にアルカイダが介入してきた。スンニとシーアとの権力争い、と簡単には説明できない。スーダンではオイルをめぐって独立した南スーダンとの争いが本格化している。正義とは何か、敵とは何か、言い切ることができない。
共通の敵はない。しかし、地球が異星人に攻撃されて侵略されるならば、他のヒーローたちと一緒に防戦はする。「攻撃はしないが、防戦はする」というところで、共同戦線をはったヒーローたち。共通の敵は居ないが、一緒に防戦はする というところが、「今」という状況を映し出しているのかもしれない。
マーベルユニバースのコミックヒーローを大集合させた、この映画に対抗して、ブロックバスターズコミックブックのヒーローたちが これまた大集合する映画が、もうじき公開されるそうだ。「スパイダーマン」、「ジ アメイジング」、「ダークナイトライブ」などだ。きっとまた 大型アクション映画になって、映画産業を振興させてくれることだろう。
通りすがりですが、記述にかなり誤りがあるので指摘しておきます。
主たる敵役のロキがロークなのは読み方の違いとかでまだ容赦できますが、ホークアイは超人的な視覚を持つ弓の名手であって、片目ではないし、シールドのキャプテンでもありません。シールドのキャプテンはニック・フューリーです。ハルクが100倍に巨大化してたらゴジラよりも大きいよ。俳優名のクリスヘミワースはヘムズワース、ロキ役はヒデルソンではなくヒデルストン。ハルク、っていうか、バナー博士役の俳優さんはルファローではなくラファロと日本では主に表記されます。この点に限っては読み方の違いと言えますがね。
今後公開されるというジアメイジングとダークナイトライブは寡聞にして存じませんでしたが、たぶんアメイジング・スパイダーマンと、ダークナイト・ライジング(邦題)のことでしょう。
それからスパイダーマンを育ててくれたのはおじさんですよ。