「『アベンジャーズ』計画に尺取られすぎ感。」アイアンマン2 NandSさんの映画レビュー(感想・評価)
『アベンジャーズ』計画に尺取られすぎ感。
前提として
・多分4回目。
・原作と思しきものは未読。
・『アイアンマン』は視聴済。
・MCUは映画作品ならほとんど視聴済。
・ジョン・ファブロー監督の他作品だと、『アイアンマン』シリーズと『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』を視聴済。
所々面白いシーンはあるのだが、どうにも『アベンジャーズ』への布石感が否めない。
まずはストーリー。
うーん……言いたいことは分かるのだが、どうにも一貫していない感じが強い。ざっくり言うと『ペッパーとローディとの関係編』『父親との確執編』『アベンジャーズ序章編』という三つのストーリー軸が並行している感じ。
『ペッパーとローディとの関係編』に関しては、結構うまくいっている。もうちょっと深堀り出来そうな余力も感じたけど、かなり好きな点。
しかし、『父親との確執編』と『アベンジャーズ序章編』に関しては尺的に物足りなさを感じる。特に前者。
急に父親との確執を話されても、トニーがそれで悩んでいる感じも無い。よって乗り越えた感も薄い。イワンの父親との対比を描いている点では結構面白かったけど。やっぱり薄い。前作からそういう話が出ていたのならまだ分かるけど、トニーの永遠のテーマって"自分の過ち・トラウマに向き合うこと"でしょ? 父親のせいで死にかけているわけでもないし、父との記憶がトラウマになっているわけでもない。その点はイワンの方が強いけど、彼の家族描写もまだまだあって良かったと思う。
『アベンジャーズ序章編』に関してだが、物語に本当に必要だったのか……? と感じてしまうところが多々ある。つなぎ方は巧いけど。ポストクレジットとか後半の15分レベルで良い。他の部分をトニーの物語に使った方が個人的には嬉しかった。
キャラクターの面々は観ていて楽しいものばかり。ストーリー的に要らない気がするだけで、S.H.E.I.L.D.のエージェントたちは観ていて楽しい。そういう意味では『アベンジャーズ』要素も悪くない。
VFX面は相変わらず。観ていて楽しい。ウォルト・ディズニーっぽいハワード・スタークも、時代による技術革新の対比になっていて楽しい。ウォーマシンの塗装が間に合わせ感満載っていうこだわりは好き。スーツの進化も本当にうれしい。
米国の軍や核兵器取り扱いに対する皮肉も混じっているのは面白い。前作にもあったが、今作ではすでにアイアインマンスーツの存在が世間に知られている。
よって、アイアンマンスーツ=核に匹敵するもの、という解釈になる。これが非常に分かりやすい。戦闘面においては、その技術争奪戦が主軸になっていくのも納得できる。そしたらそれを作成することのできるイワンが現れて……なのも分かるのだが、やっぱりここの対比が物足りない。
というかイワンとのボス戦が短すぎる。ザコ敵であるドローン戦の方が長い上に緊迫感があるってどうなんだ。
緊迫感にも通じるけど、全体的に盛り上がりが弱い。観ていて一番盛り上がったの、正直に言って最初の30分。あの部分を後半は超えていない。渋い雰囲気といえば渋いのだけど、『アイアンマン』シリーズにそれは求めていない。ピンチになったスタークがカッコいい装着シーンを経て、ドカンドカンとド派手に戦闘、盛り上がっていくのが欲しい。
そういえば編集にぶつ切りが多いように感じる。気持ち悪さは無いんだけど、少し気になった。
余談だけど、ジャスティン・ハマー役のサム・ロックウェルさんの演技が結構好き。あのクセの強さと胡散臭さと妙に冴えない雰囲気……めっちゃ良い。あと言葉が聞き取りやすい。その言動に対するミッキー・ロークさんの反応もグゥ。
小ネタも多いし、ニヤッと来る部分も好きなシーンもあるのだけれど、『アベンジャーズ』への布石に尺を使われた感が否めない。よって全体的に物足りなくなった気がする。
「観ても観なくてもいいや」ってなってしまう。そんな作品。