「と~れとれ、ぴ~ちぴち。」蟹工船 ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
と~れとれ、ぴ~ちぴち。
今作の大きな問題点は、これがあの「蟹工船」であるからで、
「カニ缶詰船」とか「カニ加工船」だったら良かったのだ。
SABU監督の作りだす世界観は、取り立てて悪いものではない。
でもそこへ名作小説をベースに掲げることを、まったく
意に介せない読者層は腹を立ててしまったんだろうと思う。
折しも、その名作が若者の間で読破されつつあることから…。
他の名作なんかでも、こういうのはよくあることだ。
まったく別の視点と解釈で描きたいのなら、他の題名を
付ければよいところだが(それに参考原典を添えればねぇ)
それでは興行的にカニかま以下、となるんだろうか。
まぁ如何せん、今作におけるSABU監督の意向は満たされて、
あとは観客がどう思うかを委ねる結果となり…。
残念ながら(夏休み期だし)公開期間はけっこう短かったが…。
支配する側とされる側の攻防戦を描く本作では、
実はもっと悲惨な現状が(そこが時代的にモノをいうわけで)
それを思うと、何だ、こんなの甘いじゃないか!なのだが、
描かれ方はどうにしろ、言っていることはどちらも同じだ。
今の雇用不安状態に被せて語っている部分が確かにある。
今度生まれ変わったら、誰誰さんの家に生まれたい??
想像するんだ、誰誰さんの家に生まれ金持ちになる自分を。
…このシーンの妄想では、おふざけが過ぎ腹も立つのだが、
ラストでその誰誰さんの名前と写真がピタリと重なったとき
ここはただ黙っている場合じゃないんだ!と怒りが爆発する。
ところで自分が働く会社でも、上司の指示は絶対だ。
これは違うだろうと思えばある程度意見を言える者もいるが、
大方は黙って黙々と自分の作業に入っている。
今のご時世、この歳で仕事を失うわけにはいかない。
まして家族を背負っている立場なら、なおさら気合いが入る。
まぁ上司とて、有能な存在なら絶対に手放したくはないので、
酷使と宥めを交互に行っている状態だが、彼女を見ていると
(女上司で独身)ものすごい精神力だといつも感心してしまう。
でも、彼女のようになりたいと思ったことは、一度もない。
どうでもいいことだが、蟹は大好きだし、カニ缶も好きだ。
食べるだけなら…。
(働いて、稼いで、生活し、映画を観るのがワタクシの幸せ。)