「無作法・無遠慮の力技」シェルブールの雨傘 よしたださんの映画レビュー(感想・評価)
無作法・無遠慮の力技
冒頭の自動車整備士たちの会話から歌である。いきなりセリフが歌なのでちょっと驚く。そして、残業を断るセリフまで歌になっているあたりから、この映画の大きな「意図」が分かり始める。
全てのセリフに節がつくという無茶な企みをこの映画は最初から最後までやり通すのだ。しかも、当初抵抗を感じている観客でも、次第にこの企みにまんまと乗せられてしまうところがすごい。
また、カットのつなぎの非常に雑なところも、観ている者は無理を感じずにはいられない。
あまり映画を観ない娘ですら、カーニバルの街頭から屋内へ入ったシーンの不自然さを指摘。「あれでは賞は取れないよ。」とのダメ押しすら入るが、なんとカンヌのグランプリ受賞。
受賞の理由は知らない。しかし、雑で無理やりなカット、極めて意図的なカラーコントロール、観客はその無理矢理加減を意識しながらも、この映画に運ばれている自分をどうすることもできないのだ。途中で降りることなど許されないジェットコースターにでも乗った気分で90分間が過ぎていく。
ミシェル・ルグランの音楽がモダンでロマンチック。それでいてテンポの良いビッグバンドのサウンドが素晴らしい。映画の成功はもちろんこのサウンドの力によるところが大きい。
映画らしい作法・言い回しを欠いてはいても、それがこれほどまでに徹底しているとすごい力を生み出す。
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