「ラストをどう解釈するのか?」シェルブールの雨傘 Scottさんの映画レビュー(感想・評価)
ラストをどう解釈するのか?
ラスト戦慄がきて暫く動けなかったわ。
ガソリンスタンドでのやり取りでジュヌヴィエーヴが「あなた幸せ?」ってギィに訊くんだけど、このひと言で「ジュヌヴィエーヴはそんなに幸せじゃないんだ」って解んの。
そのやり取りの前に「(ガソリンは)スーパーですか? レギュラーですか?」ってやり取りがあって、ジュヌヴィエーヴが「どっちでも」って言うんだけど、お金には不自由しないからどっちでもいいんだよ。でも「お金に不自由しない」って、「どっちでも」いいことなんだって暗喩になってんだと思う。
それに宝石商との結婚を勧めたお母さんも昨秋亡くなってんのね。「え、お母さん亡くなるの早くない?」って感じなんだけど、なんか大変だったのかなあって気がした。
そんなときにジュヌヴィエーヴがギィに会いに来てる。「会えるなんて思えなかった。偶然よ」って言ってるんだけど、ギィがこの場所でガソリンスタンドやってるってのは、調べないと解らないからさ、わざわざ調べて来たんだよ。
それで別れ際に「あなた幸せ?」って訊いて、ギィは目を見て「幸せだ」って答えんの。
ジュヌヴィエーヴが去って行くと、ギィの奥さんと息子さんが帰ってきてさ、幸せそうに抱き合ったりするんだよ。そこでカメラが引いて、メインテーマの音量が上がって、fin。
「ジュヌヴィエーヴに『ざまをみろ』って言ってるよね!」と思って震えたね。
まあ、それは穿った見方かも知れないけど。
この映画ラストの段階で、登場人物が幸せなのかどうかが解かんないの。そこが考えさせていいなあと思う。
「本当に愛する人と結婚しないと、みんな(お母さんも、宝石商も、マドレーヌも)幸せになれない」って言ってる気もするし。
「愛する人と結婚できなくても、みんな、それなりに幸せになるよね」って言ってる気もする。
この映画あらすじは陳腐なんだよね。「あー、ありがち」って感じの話で。でもそれを、なんかこう考えさせる話にしてるのが、監督と俳優すごいなあと思った。ミュージカルにしてる理由もその辺にあんのかも。
ミュージカルって言ってもハリウッド映画みたいに大仰に歌うわけじゃないんだよね。淡々とやってる。淡々と歌うことで、逆に登場人物の感情を決めつけにくくしてるんじゃないかな。
美術も面白かった。ジュヌヴィエーヴの家の壁紙すごいセンスなんだよ。それでなんでか壁紙と同じ生地の服きたりすんの。なんか意味あんのかな。
服で言うと、白系の服着てる人は純真で、赤系の服着てる人は打算的っていう色付けしてんのかなとも思った。
あとはカメラワークというか「ここだ!」ってとこでドヌーヴのアップがくんだよね。「この映画ドヌーヴじゃないと成立しないわ」って気分になる。結婚準備でアップで抜いて、そのまま結婚式にもってくところは凄い。
結婚式終わったところで一瞬マドレーヌが映るんだけど、そこの「チャンス到来!」って感じの表情が好きだった。僕は最初からギィはマドレーヌと一緒になった方がいいなあと思ったよ。
そんなこんなで、語りたいことが多い映画だったなあ。