「雨、傘、赤紙。」シェルブールの雨傘 きりんさんの映画レビュー(感想・評価)
雨、傘、赤紙。
まるでマティスの「赤い部屋」「桃色のアトリエ」ばり。
どぎついピンクや緑の派手な壁紙に包まれて慎ましく暮らす母子。
デジタル・リマスター版です、ポップな色味がまずもって凄い。
タイトルロールでは、縦横に行き交う通行人たちを直線歩行で交差させています。
すべての会話は歌です。
なんとも実験的で意欲的な作風ではありませんか。
こんなに有名な映画なのに、今回が初めての鑑賞でした。
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「戦死した兄のために、兄嫁を娶って跡継ぎを残す風習」は世界各地にあります。
クラッシックなら「ひまわり」、
わりと新しくて「ロング・エンゲージメント」、
邦画では「一枚のハガキ」や”すずさん“など、 戦争に引き裂かれた男女の物語や、生き残って再会してしまったという残酷な結末は、こうやって庶民の暮らしを苛んで(さいなんで)きたのだと、
戦場のシーンは1カットも無くとも、これも戦争映画なのだと、
僕は思います。
幸せなの?とジュヌヴィエーヴ、
Oui,Très bien と強がるギイ。
そして現れたカサール。
《クリスマス》の晩の話なのです、
宝石商のカサールは身重のドヌーヴを妻に迎えました。
もちろん「誰が父親なのかは問わないで村娘マリヤを妻として迎えた大工のヨセフ=クリスマス物語」がモチーフですね。
貧しい村娘マリヤに捧げられた粗末な紙のティアラが、大きな指輪やミンクの黒いコートになります。
・・絶体絶命のジュヌヴィエーヴを救ってくれたカサールのハッピーエンドに、
傘もささずに雪に降られて再会する元恋人たちのガソリンスタンドでのシーン。
二つの人生、二つの選択。あれが重なるから、なおさら切ない。
軽いタッチを装いながら、これも反戦映画の雄だと思いました。
劇中、ジュヌヴィエーヴがたった一度だけ、撮影のカメラを真っ直ぐに直視しましたよね。
真っ赤な目で、こちらに悲しみを訴える17歳の娘の目を、DVDの電源を切ったあとも忘れることができません。
きりんさん
共感をくださり ありがとうございます。
カトリーヌさんの可憐な表情もステキで
お部屋の調度品も可愛くて。
映画音楽は 勿論 最高
悲恋が悲しいですが
前編、セリフが歌で進行する映画には
最初、驚きました(^^)/
ラストシーンは名シーンですね。
kossyさん
お返事ありがとうございます。
オードリーの「ムーン・リバー吹替え拒否問題」ですね。
シェルブールの雨傘ではその対極で、俳優の肉声は一切カット。すべて無し。
全部の音声が他人=歌手による吹替えという驚がくの荒業。
監督の意向を全員が飲んだということでしょうが、歌に自身やプライドがある俳優がいたなら制作は頓挫したでしょうねー