「反戦映画なのかな。待てなかったか。」シェルブールの雨傘 Takehiroさんの映画レビュー(感想・評価)
反戦映画なのかな。待てなかったか。
『シェルブールの雨傘』(1964)
タイトルだけなんだか知っていたが、NHKBSプレミアムから観てみた。外は雨だったし。全てが音楽に乗せた歌でセリフが成り立っているというのが、私はそういうミュージカル映画というのは観たことがなく、それだけでも面白い感じだが、なぜか高級な感じがする。20歳と17歳の恋人同士が結婚したいが、女性の母親が若すぎると反対する内容から始まった。この頃字幕が面倒くさくて日本映画ばかりだったし、字幕も英語の聞き取りになるかと思ってアメリカ映画が多かったが、フランス映画であった。パルムドール受賞作品だったのか。日本の受賞作では『うなぎ』は観たが、『万引き家族』はまだ観ていない。カトリーヌ・ドヌーブも名前だけは知っていたが、なんかコマーシャルかなんかで薄っすらみたことはあるのか、この映画では若いからか、それほど私の目では絶世の美女というようには見えないのだが、世界的大女優なのだろう。主題歌のメロディーは知っていた。よく流れてくる曲だ。スタンダードだ。和訳は初めて知ったが、戦争映画なのか。これを書いている時点で主役二人と娘役のお母さんまでご存命とは長生き出演者である。まるでフランス語?はわからないが、『ジュテーム』とか『モナムール』とかは聞いたことがある。お母さんは『ママ』か。男は2年間の兵役で二人は泣く泣く別れたが、女は生活苦から男の子を妊娠していたのに、別の金持ちの男に惚れられて妊娠していても良いからと承諾し、女は別の男と結婚してしまった。その後で男が兵役から帰還してくる・・・。事をおばから男は告げられる。やがて男は自動車修理工に戻ったが、上司と口論し辞めてしまう。それだけ荒れていた。それにしても改めて、セリフの全部が歌になっているのも変と言えば変な気もするが、変に心地よい気もする。ラストシーンに向かう前までに、別れた男女双方とも堅実な別の伴侶を持ち子供もいて(女性側は別れた男との子供だが)それぞれ幸福な最中に、偶然雪の日に男性の経営するガソリンスタンドに女が給油に車を止めた。束の間に語り合い別れる二人。その束の間のシーンが複雑かつ諦念を感じる雰囲気を醸し出し、有名な音楽が壮大に添えられる。俳優と女優の演技もそこで真価が発揮される。愛したはずの男女の片方が待てなかったためのさみしい出来事であるが、そんな人を支えてくれる新たな人が出来るのも実は悲しい。女が男に幸せかと聞き、男が幸せだとはっきりと応じて、女は出て行く。連ドラの『半分、青い。』も似た出来事であるが、基本的に愛し合った最初の男女が添い遂げるほうが美的なのだと思いたい。