「ガイ・リッチー×シャーロック・ホームズという企画アイデアがまず面白い。」シャーロック・ホームズ すっかんさんの映画レビュー(感想・評価)
ガイ・リッチー×シャーロック・ホームズという企画アイデアがまず面白い。
◯作品全体
短いカット割りで時間を巻き戻す、ガイ・リッチーの種明かし演出を「推理」の一丁目一番地にあるシャーロック・ホームズで…というアイデアがまず面白い。
曇天と工業化が進むロンドンの渋い色味の中に馴染む新しいホームズ像といい、ガイ・リッチー&ホームズの良質タッグだ。
ただ、物語に奥行きを感じないのは、登場人物が作品外の部分で語られつくされていて、作品内であまり語られないからだろうか。ホームズとワトソン、二人の関係性とか、ワトソンの婚約者やアドラー。その存在がキャラクター化されてしまっていて、そこから逸脱できていない気がした。日本のキャラクターで例えるなら水戸黄門とか、そこらへんだろうか。今更作品内で語らなくても登場人物の関係性が知れ渡っている以上、ルックスやそのキャラクター固有の特技を改変して進化させていかなければならない、というような。
ガイ・リッチー作品で好きな要素として、スタイリッシュなカット割りによるストーリーの種明かしがあるけれど、個人的にはそこにたどり着くまでに語られる、他愛ない会話劇からのその人物の弱みや過去も好きだ。ただ、本作では弱みは見せれどすぐに本筋に戻ってしまうし、ワトソンとの関係性もテンプレートな仲違いからの再びの共闘…というので片付けられてしまってちょっとさみしい。
20世紀初頭のロンドンの美術は素晴らしいし、アクションも見ごたえがあって面白かったが、「シャーロック・ホームズ」と「ガイ・リッチー」、それぞれが100%だったかと言われると少し物足りなさを感じてしまう作品だった。
◯カメラワークとか
・アドラーがモリアーティと密談する馬車に接近するホームズ…このシーンの種明かしは面白かった。短い時間で華麗に躍動して当然のように馬車の前にいる、そのアクションとスピード感こそガイ・リッチー節だ。