「観応えあり」私の中のあなた masakoさんの映画レビュー(感想・評価)
観応えあり
キャメロン・ディアスが初の母親役、そして『君に読む物語』のニック・カサヴェテス監督で話題となっているこの作品。主演はキャメロン・ディアスというよりも、アナ役のアビゲイル・ブレスリンちゃんだったように思います。エンドクレジットでもキャメロン・ディアスは最初じゃなかったような・・・。
11歳のアナ。
彼女は白血病の姉・ケイトを救う為のドナーとして遺伝子操作して創られて生まれてきた。ケイトが病気でなければこの世に誕生しなかった命。
そして生まれた時からケイトに血液や骨髄などを提供し続けてきたアナだったが、「もうケイトの為に手術を受けるのは嫌、臓器提供を拒否する。」と、弁護士を雇って両親を訴えた。
ケイトの病気と闘いながら、それでも幸せに暮らしてきた家族に訪れた突然の綻び。アナが臓器提供を拒否するということは、ケイトの死を意味する。アナは何故今になって、大好きな姉への臓器提供を拒否することにしたのか。
いやいや、びっくりな内容ですよ。
一人の娘の命を救うために、犠牲になる子供産むという時点で唖然。実際にこんなことがあるのだろうか?できるのだろうか?というのが最初の疑問。そして親はドナー提供する為に創った子供にどのような感情を抱いているのか?本当にきちんと愛してあげられているのか?アナはそうやって産まれてきたことを悲しいと思わないのか?疑問だらけー。
ケイトのことが本当に大好きなアナは、小さい頃から検査を受け続け、針を刺されて血を採られ続け、臓器を提供し続けてきた。悪く言ってしまえば、アナはケイトが生きるための道具であり部品だ。私がアナだったらと思うと、悲しくて仕方ない。だけどアナはきちんと自分のその役目を理解しているし、親のことも多分とても好きだ。それがすごいと思ってしまいました。もし私だったら、自分は愛されてないのではないか?と常に疑問を抱いてしまいそう。
だけど、アナは明るく優しくとてもいい子に育ってる。そんなアナが突然訪れた勝訴率91%を誇る有名弁護士事務所。そしてもう臓器提供はしない、両親を訴えたいから力を貸して欲しいと頼み込みます。
正直、私、ここでわかってしまったんですよ。なぜアナがこういう行動を起こしたのか、が。これ、気づかないほうが多分良かったよなぁ。だから泣けなかったのか?
キャメロン演じるサラは元弁護士。娘に訴えられたサラは自分で自分を弁護するわけなのですが、このサラの言い分、ちょっとなぁと思ってしまうことが沢山ありました。サラが白血病の娘の命を最後まで諦めたくない、どんなことをしてでも生かしたいという気持ちはわかる。だけど、サラは家族みんなのことを思ってるって言ってるけど、頭の8割以上はケイトのことしか考えていない。実際病気の子供を持つ親はそうなってしまうのかもしれないけれど、ちょっとケイト以外の子供のことを蔑ろにしすぎていたように思ってしまいました。
ただ、この映画ではアナが訴えたことはとても重要なことだけれども、アナと両親が戦うということはさほど重要ではないので、裁判のシーンなどはほんのちょっとしか描かれていません。それよりも、きちんとこの”家族”のことが、それぞれの立場で描かれています。家族みんなが違った形でケイトを愛している。ケイトの為に自分ができる精一杯のことをしてあげたいと願い、叶えてあげようとする。ケイトに無償の愛を捧げる家族たち。
全てケイトの為。
そう思ってしたこと、してきたこと。いったい何が本当に彼女の為だったのだろうか?サラがしたことはただの親のエゴだったと思うし、ケイトの為というよりも無意識に自分を守りたかったからかもしれない。それはサラの妹も指摘していたけれども、だけどサラが頑張らなかったらケイトは5歳でこの世を去っていたはずだし、その頑張ってきた答えが「なかなかいい人生だったよ。」という言葉に凝縮されていたのだと思います。
また弁護士や判事もそれぞれ事情を抱えている。だからこそ、アナの訴えに真剣に耳を傾け、この家族の為に一生懸命になってくれる。そんな彼らの優しさもとても良かったです。
ケイトが白血病とは思えないぐらい元気に走り回る姿や、髪を気にしてるのに帽子や鬘を用意してあげないことなど、いろいろひっかかるところもあったし、サラのアナへの愛情が最後までよくわからなかったりといったところはありましたが、沢山の愛が詰まってる作品だと思いました。海辺のシーンがとても好きです。
『重要なのは、私にすばらしい姉がいたということだ。』
みんながケイトを愛していたと思うけれども、私はアナが一番彼女をよく理解し、そして愛していたのではないかと思いました。