私の中のあなた : 映画評論・批評
2009年10月6日更新
2009年10月9日よりTOHOシネマズ日劇ほかにてロードショー
強い絆で結ばれた家族の愛を描くアンサンブル・ドラマ
白血病の姉のドナーとなるべく遺伝子操作で生まれてきた11歳の少女が、両親を訴えた。こう聞くと、法廷シーンがメインの訴訟ドラマを想像するが、法廷シーンはごくわずか。重いテーマとセンセーショナルな設定が想像させる哀しい涙とは裏腹に、これは倫理と感情がせめぎあうなか、強い絆で結ばれた家族の愛が溢れたアンサンブル・ドラマ。そこではアビゲイル・ブレスリン演じる問題の次女すら、時間を交錯させて家族の歴史をひも解いていくパズルのピースにすぎない。
もちろん、そこには長女の治療のためなら手段を選ばない母親の執念や、そんな母親への家族の困惑といった負の要素も描かれているが、全編を包むのは温かさときらめき。なかでも、同じ病気の少年との長女の恋の描写は、彼女自身の恋のときめきも、彼女を見守る家族の気持ちも味わえて、出色。そんな具合に、この家族の状況は誰もが経験するものではないのに、どの登場人物にも自分の気持ちを重ねることができる。涙のツボだけ押して、心に響かない作品も少なくないなか、久々に温かい涙が溢れてくるのも、そこが大きいのでは? 少年役のトーマス・デッカーのクールな美貌とあいまって、見たら、誰かに薦めたくなる1本だ。
(杉谷伸子)