「純粋なドキュメンタリーではなかった」オーシャンズ わたぼうさんの映画レビュー(感想・評価)
純粋なドキュメンタリーではなかった
今作は「自然環境ドキュメンタリー」ではない。「政治・宗教が入り混じった偽装自然ドキュメンタリー」である。
最初はネイチャーチャンネルを見ているかのような正統派ドキュメンタリー的な内容。それが6、7割ほど進んだところで突然、偽善的な生物保護描写が入ってくる。
感じてしまう違和感。
サメ漁(フカヒレと思う)でヒレを切り取られたサメが海に棄てられるシーンがあったが、アレは果たして本物だろうか?
どうやら今作では、忠実に生き物に似せたロボットも一部で使用されているらしい。
ならあのシーンが作りものである可能性もある。事実、ヒレを切り取るシーン(ヒレを'干す'シーンはあったが)はなかった。
エンドロールの後に「本作の撮影で生き物を傷つけてはいません。人為的に〜」といった字幕が流れたが、これはそういった意味だったのかも。
しかもそのシーンではナレーションが皆無。宮沢りえさんを批判する訳ではないが、単調で微妙だったナレーションが、補足してほしいところでダンマリなのはどうかと。
鑑賞後に調べてみれば、どうやら「シーシェパード」が絡んでいるらしい。
いま注目の的、日本人の敵ナンバーワンの団体「シーシェパード」。
彼らだけに限らず、自然保護団体から圧力でもかかったのか、明らかに毛色の違う場面が僅か10分程度入ったことで、この映画は悪質なプロパガンダ映画となってしまった。
そのような描写がしたいならマイケル・ムーアのように問題点を徹底追及した作品を作るべきである(弁解しておくが、自分はマイケル・ムーア作品は好きです)。
制作にわざわざ70億円という大金、長い年月をかけたのに実にもったいない。
これは絶対にドキュメンタリーではないし、そういう風にメディアが喧伝するのもいただけない。
単純な自然映画としては、「ディープブルー」より上。「皇帝ペンギン」や「アース」には劣る。
個人的には、「シーシェパード」とは話し合い(恐らく応じないであろうから力ずくでも)の後に理解を得られないようなら、海上自衛隊や海上保安庁の護衛艦を捕鯨船に付けて、彼らの船を撃沈してもいいと思う。
少し立場を変えてみよう。
もしアメリカで、「牛を殺すのに反対の団体」が武装して、食用牛の牧場の業務を妨害したら。
その団体は射殺されても文句は言えない。
今年は和歌山のイルカ漁反対映画「ザ・コーヴ」もあるので、動静を見守りたい。