「興ざめの後半」オーシャンズ マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)
興ざめの後半
この手の映画は、編集が命だ。ストーリー性を持たせるのか、神秘性を強調するのか? 今作は後者だが、いずれにしても観る側が期待するのは、自然と生命力のダイナミズムな映像だ。
人工的とも思えるコントラストのクラゲの大群、分厚い皮膚に脊髄が浮かぶ鯨のアップなど魅せる映像がたっぷり続く。このような映像を捉えるためには、最新鋭の機材も必要だが、なんといっても豊富な経験と忍耐による賜物だ。映像そのものが人類の遺産といってもいい。
だが、イメージと称して、合成された映像を挟まれると、それがたとえ数分でも、すべての映像が嘘くさくなってしまう。
ましてや、自然破壊に触れられたら興ざめだ。
一部の民族が何百年と継承してきた食文化を中傷する、これ見よがしの映像は、観ていておもしろいものではない。欧州では16世紀から油を採るために鯨を捕っていたではないか。訴えたいことは解るが、形ばかりの触れ方では自己中心的な欧州気質を感じるだけだ。
映画を通して、ダイナミックな自然を堪能した人々が「自然をもっと大事にしなければ」と思いを新たにすればいいわけで、教育映画を観に来ているわけではない。
なかなか「ディープ・ブルー」を超える作品が出てこない。
荒波を超えていく漁船の映像は迫力がある。海ってこんなに荒れるんだ。
p.s. ナレーターの宮沢りえ。台詞だと魅力ある声質だが、ナレーションだと“サ行”が耳につく響きをもつ。宮崎美子の方が上手い。
とってつけたように始まるエンディング・ソングもどうよ。
環境問題啓発映画なら、大人も500円にしてほしかった。
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