劇場公開日 2008年12月20日

「現代に通じる歴史を描いた一大叙事詩」アラビアのロレンス 完全版 鶏さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0現代に通じる歴史を描いた一大叙事詩

2025年4月9日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

映画史に残る名作である「アラビアのロレンス」ですが、これまで観る機会を得ずに来ていました。それが「午前十時の映画祭」で上映するというので、観に行って来ました。
ただ有名な映画であるということは知っていたものの、内容については殆ど知識がありませんでした。実際映画を観たら、第1次世界大戦当時の話であることは分かりましたが、鑑賞後にググったら、なんとロレンスが実在の人物であることを知り驚きました。まさに無知の知というか厚顔無恥というか・・・

いずれにしても本作は、第1次世界大戦当時に実在したイギリス人士官であるロレンスが、現在のエジプト、イスラエル、ヨルダン、サウジアラビア、シリア付近の中東地域で八面六臂の活躍する様子を映画化した一大叙事詩でした。そしてそのスケールのデカさ、映像美、壮大な音楽、出演者たちの熱演はもちろん、実在の人物に寄せた役者の容貌、さらには砂漠の中での大迫力の戦闘シーンなどなど、どの切り口も驚嘆すべきものがありました。
主人公のロレンスはと言えば、中東地域の歴史やアラビア語にも通じた博識で正義感溢れる人物ではあるものの、礼儀作法がなっておらず、上官に疎まれる相当な変わり者として描かれていました。そんな彼の任務は、イギリスが属する連合国と戦っていた中央同盟国に属するオスマン帝国の力を削ぐため、当時オスマン帝国が支配していたアラブ民族の反乱を援助するというもの。そういう意味ではスパイ映画と言ってもいいものの、現代風のスパイ映画とは全く趣を異にするところが本作の特徴でした。
そして本作を一介のスパイ映画ではなく、一大叙事詩に押し上げたのは、やはり主人公ロレンスが背負ったものが、まさに歴史そのものだったからのように感じられました。ロレンスは、(オスマン帝国だけでなく、イギリスなど欧州勢からの独立も含む)アラブの独立を助ける義勇溢れる人物として描かれており、大戦後にオスマン帝国から分捕ったアラブ地域を、イギリスとフランスで分割統治するという密約であるサイクス・ピコ協定の存在を知らずに活動していたという前提で描かれていました。その前提に従うと、祖国イギリスが裏で仁義にもとる密約を交わしていたことを知り、義憤にかられるシーンは、本作最大の見せ場であり、暗黒色をした国際政治のリアリズムを嫌が上でも感じさせるところが実に印象的でした。

そして本作で描かれた中東における紛争は、現在進行形で行われているパレスチナ・ガザ地区におけるジェノサイドにも通じている訳で、百年以上続く紛争がいつになったら終わるのか、思いを至らせざるを得ない思いになったところでした。

そんな訳で、映画史に残る本作の評価は★4.8とします。

鶏
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