グラン・トリノのレビュー・感想・評価
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アメリカン頑固ジジイ
男気を魅せる
遠くの親戚より、近くの他人。
『ベスト・キッド』や『マイフェアレディ』のような話。
異文化の地でモデルを見失い人生をどう作っていったらいいかがわからなくなっていた少年を、導いていく老人。少年の家族との交流を絡めて描く。
その交流が心地よい。
冒頭で葬式の食事会の隣で、誕生祝。この映画が、”生と死”を扱っていることを提示する。
でも、それだけではなくて、さりげなく社会の現状・問題を的確に押さえていく。
人種のるつぼ。”クロ”は”クロ”だけだが、白人系はここぞとばかりにそのルーツの多様性を表現する。その中で、改めて皆移民なのだということを示す。クリニックでもここぞとばかりに人種のオンパレード。
ファンタジーのような展開なのだが、細かい考証もしっかりしていて手抜きがない。USAの映画では、日本人役に中国人が使われたり、着物も日本人がみると?なものが多かったが、この映画ではきちっと民族を押さえている。モン族の民族衣装とか、タペストリーとか。
また、朝鮮戦争・ベトナム戦争も絡める。モン族が、その政治的な関係の中でUSAに移り住まざるを得なかったことも織り交ぜる。
それが全然説教臭くない。口をあんぐりと開けてしまいそうな、機関銃のように醸し出される悪口雑言で観客を煙に巻く。
勉強するにもお金がかかるし、何をしていいのか持て余していた少年。庭いじりは、文化の違いを象徴するエピソードでもあるが、”自分らしさを作り上げていく”象徴でもあろう。
先進国と、発展途上国の描き方だと、知的労働者と肉体労働者という対比が多いが、ここではUSAの老人が肉体労働者。その指導を受けて、ひ弱なひよこが少しずつ力をつけていく。ウォルトとタオの表情の変化がまぶしい。
だが、そこに入る邪魔。
タオとスパイダーたちを分けたものは何なのか?
ウォルトの紹介で職を得るタオ。ウォルトがかわいがっているから、イタ公もアイルランド野郎もタオを受け入れた。USAでは転職する際は、前職からの紹介状を必要とすると聞いたこともある。実力主義とはいえ、意外にのコネ文化。
スパイダーたちにはウォルトのような人はいたのか?コネがなく、就職できなければたむろするしかない。
それだけではなく、信仰の対比。
上から目線で知ったつもりになって説教する若い神父。
初めて会ったのに、ウォルトの抱える困難を喝破して見せたモン族のまじないし。
根底の文化は一緒のはずなのに相容れない家族と、異文化なのに付き合いが発展していくご近所。
大人と子どものバディは『パーフェクト・ワールド』でも描いていた。とはいえ、監督がここで表現したかったのは、『パーフェクトワールド』の焼き直しではなかろう。
つい、”教訓”を読み取りたくなる。
そしてクライマックス。
ヒーローものとしてみれば、格好の良い幕切れ。
でも、私がタオやスーならば、一生悔いが残る。特に、スーモタオもウォルトがやったことを知らないのだから。
そして家族との関係。自分ならば?
心が通じた人に肩入れしたい気持ちと、でも家族をないがしろにしていいのかという思いとの狭間で、納得がいかない。
結局、自分勝手な人だったんだな。
こういうジジイになりたい
この映画には派手なアクションはない。
1名を除いて、それほど有名な俳優も出ていない。
物語もとても小規模な範囲で進行し、核戦争から世界が救われるわけでもない。
だがイーストウッドがいる。
とにかく、イーストウッドが人間くさく、愛おしい。
そしてラストは若い世代を導く伝道師のように有終の美を飾る。
自分の存在意義とは何か、自分の役割とは何か。
外の世界と触れ合うことで、自分自身の内面とも向き合い、人生の終盤に自分の道を切り開いてバトンタッチする。
その生き様に、私は心を強く揺さぶられた。
後に、それはイーストウッドの映画人生そのものだったんだと知った。
公開当時私はほとんど映画を見ていなかったが、たまたま本作を観に行った。
鑑賞後どうしても登場人物たちが頭から離れず、1週間後にまた観に行ったことを覚えている。
当時色々と悩んでいた私は、この映画を観て救われたし、勇気付けられたし、前に進む元気をもらった。
私のオールタイムベスト。
まだ観ていない方にも是非観て欲しい映画。
イーストウッドの遺書
車の出ない車映画。
イーストウッドの凄さ
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自宅(CS放送)にて鑑賞。C.イーストウッド監督・製作・出演。ラストシーンで顕著だが抑えた色調と単音の音楽はこの監督の十八番芸。イーストウッドは抜群の演技力で頑固親父を熱演。一方、“タオ・ロー”役のビー・ヴァンはやや無理があり、特に怒りをぶつける様な感情的なシーンに難有り。本作でも触れられる死生観はこの先に監督・製作・音楽で参加した『ヒアアフター('10・震災発生で津波の描写が問題になり直ぐに公開が自粛されたが劇場で鑑賞)』に繋がって行くのかと納得。微妙だけど嫌いじゃない一作。65/100点。
・鑑賞日:2011年9月17日(土)
頑固ジジイの生と死
人種差別主義者の頑固爺さんが隣に住むアジア系のモン族の家族との関わりで徐々に変わっていく話。
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この爺さん、ほんとに偏屈ジジイでアジア系なら中国人だろうと日本人だろうと関係ない。アメリカから出てけ。って感じのあぁこういう人がトランプの支持者なんだろうなと思わせる。
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でも隣の住人と関わるうちにモン族の心の温かさを知って変わっていく。人種差別主義者の人ってもうこうやって違う人種と強制的に関わらせるしかないんだろうな。
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ほんとに、顔だけ見て人種で判断するのは良くないよ。
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後半の懺悔のシーンは、おじいにとって本当の懺悔は少年に向けて。その証拠に、少年に罪の告白をしてる時も教会同じようにあみあみになってる。
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ホントの正義とは何かをちゃんと教えたじいちゃんカッコ良いよ。
イーストウッドの為に用意されたような脚本!
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