劇場公開日 2009年4月25日

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「1人の侍を見た。ラストは突き放され、作品に抱きしめられる」グラン・トリノ Marikoさんの映画レビュー(感想・評価)

4.01人の侍を見た。ラストは突き放され、作品に抱きしめられる

2022年6月2日
iPhoneアプリから投稿

イーストウッド作品はほぼ全て観ていますが、
ナンバーワンは「ミリオンダラー・ベイビー」

本人が出ていないけど「アメリカン・スナイパー」と「ジャージー・ボーイズ」「チェンジリング」
今までこの4作品が大好きでした。

ここに、この「グラン・トリノ」が加わりました。

・・・実は観るの3回目なんですけど、今回が一番涙出ました。

退役軍人で偏屈な老人、奥さんにも先立たれた主人公ウォルト。
戦争の傷も深く、余程過去に色々あったのか、人に心を閉ざし、平気で人種差別もする。

それが隣にモン族の家族が越してきてから、変わり始めて…
とりわけタオとスーの姉弟と言葉を交わすうちに、人間らしい心を取り戻していくウォルト。
タオを息子のように厳しく優しく寄り添う。

宝物のグラン・トリノの古き良き輝きと、
枯れゆく中にも人との出逢いによって溶けていくウォルトの心。
いい人過ぎないのがいい。
頑固なくらいでちょうどいい。
遠慮なく物を言ってしまうけど、心根は優しい人。

悪縁である親戚のごろつき達の悪行はエスカレートし、
良かれと思って起こしたウォルトのある行動がきっかけとなり、更なる不幸が姉弟を見舞う。
怒りで手が震えるほどの鬼畜の行いに、思わず身を乗り出す私。

これ以上は詳しく書きませんが、
ウォルトは人生の最後に、大仕事をやってのける。

「自分の行いの落とし前は、自分でつける」

ここに、1人の侍の姿を見ました。

言い訳もしない、逃げもしない、
ただ、助けたかっただけなんだ。
力になりたかっただけなんだ。
許してほしい。
これで、チャラだろ?

そんな声が聞こえてくるようでした。

衝撃的な結末を迎え、タオの運転するグラン・トリノを颯爽と映して、ジ・エンド。

あまりのショックに呆然とし、
突き放されたような感覚で眺める景色。
エンドロールに流れるイーストウッドの静かな歌声が心に沁みて、涙とまらん。

この作品の余韻感、半端なく大きい。
勘弁してほしい。

めちゃくちゃいい物観せてもらいましたよ。
感謝しかありません。

間違いなく、後世に語り継がれるイーストウッドの代表作。

Mariko
Marikoさんのコメント
2022年6月4日

きりんさん、コメントありがとうございます。
仰る通り!
人間讃歌なんですよね。
みんな、凸凹のある不完全なキャラクターばかり。

中にはろくでもない奴らもいて殺してやりたい位ですが・・・

Mariko
きりんさんのコメント
2022年6月4日

あ、、レビュー読ませてもらってて また鼻の奥がツーンとなったです。

監督は人間観察が素晴らしい。子供〜大人〜老人まで、その悪いところも愛すべきところもしっかり観察してシナリオを書いてくれている。
たいしたものです。
人間讃歌。

きりん
Marikoさんのコメント
2022年6月3日

ゆ〜きちさん、ほんとに!
じいちゃんカッコいい。
こんな筋の通った骨太な老人、今の日本にはいませんねぇ。

Mariko
ゆ~きちさんのコメント
2022年6月3日

いいね、ありがとうございました。イーストウッドの頑固ジジ役、めちゃくちゃリアルでも、着地がカッコいいんですよね。
心が浄化されるのをしみじみ感じられる作品でした。

ゆ~きち