ずっと観たかったのに、観られなかった作品と、配信で出会える幸せ。いい世の中になりました。
低予算で、撮影日数も短いと思われる作品ですが、心をギュッとつかまれるシーンがいくつもあります。
まず、出てくる中学生が等身大です。しょうもないし、悪いこともしますが、きちんと純粋なところがリアルで、でもやっぱりアホで、共感しかありません。
それから、この作品はホームレスをモチーフにしてますが、自分は「映画」を描いた映画だと思いました。
というのも、モチーフに対して、城定秀夫は、映画監督としてどういうスタンスをとりたいと考えているのかが、中学生たちのホームレスとの関わり方の変化、そして劇中映画で中学生たちに語らせた言葉でよく表現されていました。
最近観た別の映画で、ショッキングなモチーフをことさらショッキングに取り上げながら、自分は全く別の地平に立ってただ眺めていることを客観的視点と思い込んでいるように見えるふざけた作品にいくつも出会いました。その度にモヤモヤと怒りを覚えていましたが、この映画には心が洗われました。
城定秀夫の作品には、他人が見せる人間の業の部分を「しょうがねぇなぁ」と言いながら、「でも、俺もしょうもねぇんだよなぁ」と許していく緩さが感じとれて好きなのですが、この作品もまさにそうでした。
彼は、映画が本当に好きで、映画を信じているんだなということが伝わってくる良作でした。
90分以下で観られるので、タイトルのおふざけで切り捨てず、是非観てみて欲しいと思います。